日ハム新球場「新駅計画」で露呈、JR北海道の限界 大量離職でノウハウ流失、建設費が高額に

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このうち特急ミュースカイを始めとした中部国際空港行の空港連絡列車は6本で、名鉄は空港アクセスを担っている点でも千歳線と似た状況にある。名鉄名古屋駅からの行先は多岐にわたり、豊橋方面だけでも途中で名古屋本線から常滑線や河和線、豊川線などに分岐しさまざまな方面に直通する。岐阜方面についても名古屋本線と犬山線の分岐部では平面交差が存在するなど、名鉄では限られた鉄道施設を活用してJR千歳線よりもはるかに過密で複雑な運行を行っていることから、JR北海道の「千歳線が過密ダイヤだ」という主張には疑問符が付く。

見直し後の計画でも通過線は残されることになったが、結果としてこれが工費と工期を膨らませていることには変わりはない。

複数案を比較すべきだった? 

富山市交通政策監で富山大学特別研究教授の中川大氏は、ボールパーク新駅の折り返し線について「実際にダイヤを作ってみるとわかると思うが、札幌側から来た列車を新駅で折り返すのは非効率で引上げ線の効果はそれほど大きくないと思われる」と指摘していた。

例えば、阪神タイガースの本拠地最寄りの阪神電鉄甲子園駅では、試合終了後に大阪・梅田方面に向かう臨時列車は、甲子園駅の折り返し線だけでは待機させられる列車の本数に限りがあることから、あらかじめ約2.6km西の西宮駅や10km以上離れた石屋川車庫に待機させておいた列車が試合終了に合わせて続々と甲子園駅に送り込まれてくる。 

これについては、JR北海道の見直し案ではボールパーク新駅での引上げ線をやめ、北広島駅構内の引上げ線を活用して列車の折り返しを行う案に修正されたことについては理にかなっていると言える。

中川氏は「JR案しか選択肢がないわけではなく、ほかの案も検討されてもよかったのではないか」と続けた。「跨線橋を不要とし利用者の利便性確保と事業費抑制の両立を図るためには、すでに線路をくぐる歩道のある場所にホームのみを設置する案のほかに、JR案の駅舎建設を予定している更地となっているエリアに平面の引込線を複数作るという発想もありえたので、いずれにせよ複数の案を比較することが必要だったのではないか」と話す。

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