ジャニーズ「新会社設立」が起死回生に有効なワケ 「社名変更」よりもずっと重要なことがある

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東山社長の今後はどうなるか?(撮影:風間仁一郎)

気になるのは東山氏の処遇だが、記者会見で被害者と誠実に向き合う旨表明していることを考えると、旧会社に留まったほうが適切だろう。

加害者の直系の藤島ジュリー氏に加え、タレントトップの東山氏が被害者と直接向き合って補償と救済を行うことは、被害者に対しても、世の中全体に対しても大きなアピールになる。

東山氏自身には過去に性加害行為、パワハラ的行為を行ってきたという疑惑も浮上している。今後、新たな問題が発覚してくる可能性も十分にある。

もちろん、時代の変化や芸能界という特殊環境も加味して、評価していく必要がある。とはいえ、東京五輪の開会式イベントの主要メンバーが過去の行動によって相次いで降板になってしまったことに象徴されるように、人権問題について現代の人々の目はかつてなく厳しい。

藤島氏や東山氏に新たな問題が発覚したとしても、旧事務所が被害者補償に特化する限りは、本業であるタレントの芸能活動への影響も最小限に留められる。今後、企業がタレント起用で取引を行うのは、一連の反省を踏まえて設立される「別会社(新会社)」になるからだ。

9月19日のジャニーズ事務所の発表で取締役について言及がなかったのは、現ジャニーズ事務所側の役員構成が現状維持を前提としているからではないかと推察される。

ジャニーズこれからの課題と可能性

これまで述べてきた「別会社を設立する」という方法論は、窮地に陥ったジャニーズ事務所が復活するための唯一の方法と言っても過言ではないと筆者は考えている。

ただし、いくつか課題も残る。新会社を設立するやり方も、新会社に旧会社(現ジャニーズ事務所)を事業譲渡するやり方、会社分割を行うやり方、持ち株会社化するやり方など、さまざまな方法がある。

それぞれのやり方にはメリット、デメリットがあり、どのやり方を選択するのか? 選択した手法のデメリットをどう解消するのか? という難問が待ち構えている。

出資者と資金調達の問題、法的な問題、税金の問題、タレントや取引先との契約の問題をクリアしながら、それぞれの会社の業務を推進していくことが求められる。

これらが1つでも滞ると、新体制への移行も遅れる。結果、激しい批判を浴びることになり、それが改革の足かせともなりかねない。

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