拡大BRICSに世界戦略の軸足を移行する中国外交 グローバルサウスとの経済協力を推進

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第15回BRICS首脳会議の最終日に演説する中国の習近平国家主席(写真・2023 Bloomberg Finance LP)

中国の習近平政権は、国際秩序が多極化する中で2024年から加盟国が11カ国に拡大する「BRICS」に外交と経済協力の軸足を移そうとしている。アメリカ一極支配が崩れ主要先進7カ国(G7)の役割が減衰する一方、新興・途上国を意味するグローバルサウス(GS)の影響力増大に対応する動き。国際政治で比重を増すBRICSを展望する。

BRICS拡大は習近平の勝利

BRICSとは、アメリカ金融大手「ゴールドマン・サックス」の経済学者ジム・オニール氏が、今世紀に入り著しい発展を遂げたブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa)の5カ国の頭文字をとった総称だ。オニール氏が2001年11月に発表したリポートで初めて言及し広まった。

5カ国のうち南アフリカを除く4カ国は、2009年非公式首脳会議を開催し、ロシアは米欧主導の世界秩序への対抗軸の構築を提唱した。2011年からは南アフリカが首脳会議に参加し、BRICSと総称されるようになった。

2023年の第15回首脳会議は、南アが議長国になりヨハネスブルクで8月22~24日に開催した。シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領は24日、成果報告でアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)6カ国が、2024年1月1日からBRICSに新規加盟すると発表した。

拡大後も「BRICS」の名称は変わらないが、「BRICS11」「拡大BRICS」など、5カ国時代と区別する新通称で呼ばれることになろう。

今回のサミットでは、中国とロシアがBRICS加盟国の拡大・強化を強く主張。その一方、インドとブラジルは消極的と伝えられたが、ふたを開ければ5カ国が一致して「拡大BRICS」が決まった。

加盟国拡大について習近平・中国国家主席は「歴史的」と称賛「BRICS諸国はいずれも重要な影響力を持っており、世界の発展に対して重要な責任を担う」と述べた。

拡大BRICSを、国際政治・経済の枠組みとして重視する姿勢を示したもので、『ニューヨークタイムズ』紙は「習近平の勝利」とコメントした。

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