土俵際の資生堂、24年に魚谷会長が「退任表明」 創業家の福原義春元社長逝去で迎える転換点

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一方で、2018年には化粧品専門店向けブランド「ディシラ」を廃止、2021年には「TSUBAKI」や「uno(ウーノ)」などの日用品事業を投資ファンドへ譲渡するなど不採算ブランドを徹底して削減した。

また、これまでは希少性を重視し、高級化粧品は化粧品専門店や百貨店などに販路を絞っていたが、この戦略も転換した。日本や中国においてEC(ネット通販)の積極展開を行った。化粧品専門店は年々減少し、地方で百貨店が相次いで閉店している中、EC強化は利にかなった戦略ともいえる。

だが、販路の拡大は化粧品専門店などの販売チャネルからの反発を招く。2020年11月に魚谷氏は、自社ECサイトでの安売り販売が批判を受け、化粧品専門店向けにお詫び文を配布している(資生堂社長、値引き販売で異例の「お詫び文」)。

コロナ禍を機に窮地に立たされてしまった

加えてコロナ禍以降は、ブランド毀損というしっぺ返しを受けている。入国制限によって失ったインバウンドの売り上げを取り戻すべく中国への進出を加速した。だがロレアルやエスティ ローダーなど競合との安売り競争に巻き込まれ、転売による値引き商品が市場に出回るようになった。

インバウンドの波に乗って急成長した魚谷氏の資生堂経営はコロナ禍を機に窮地に立たされてしまったのだ。

国内では高コスト体質の問題も表れている。売り上げが減少したことで美容部員を含めた人件費などを賄いきれなくなった。同社の国内事業は2022年度、2023年度上半期(1〜6月)は赤字に陥っている。

だが、8月8日の決算会見で藤原社長は「抜本的なリストラは考えていない。店舗人材の接客時間が最大化できるよう配置を見直す等で固定費を削減する」と述べており、固定費抑制の余地は限定されているように思える。

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