土俵際の資生堂、24年に魚谷会長が「退任表明」 創業家の福原義春元社長逝去で迎える転換点

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3月に開催された定時株主総会では、1月に社長COOに就任したばかりの藤原憲太郎氏が立ってプレゼンテーションを行う一方で、魚谷氏は着座したまま説明をしていた。

また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の佐藤和佳子シニアアナリストによると、同説明会で「魚谷CEOは2024年に退任するつもりである」(佐藤氏のレポート)との意思を示した。その言葉通りになれば、2014年から続いてきた魚谷氏の長期政権が10年の節目で終わりを告げることになる。10年という期間は、近年では福原氏に次ぐ長さである。

もともと2022年11月に藤原氏の社長就任が発表された会見で、「任期の最後2年間は、次のリーダーと併走することを考えていた」と魚谷氏は語っており、2024年での退任は「既定路線」といえる。

10年間にわたる魚谷経営の「光と陰」

足かけ10年にわたる魚谷氏の経営は、前半こそ資生堂を成長軌道に乗せたものの、後半は必要な改革に手をつけずコロナ禍にも見舞われたことで、その勢いを失った。

高級化粧品に特化した資生堂だが、コロナ禍以降はブランド毀損というしっぺ返しを受けた(撮影:今井康一)

魚谷氏が社長に就任する直前である2014年度の業績は売上高7776億円、営業利益276億円だった。それが2019年度には売上高1兆1131億円、営業利益1138億円と業績を大きく伸ばした。急成長の背景には2つの戦略がある。それが高級化粧品への特化と販路の拡大だ。

その代表例が、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」といった高級スキンケアブランドへの集中投資だ。スキンケア商品は採算性が非常に高く、商品によっては粗利率が8割以上(原価率が1〜2割)と、収益性の向上に寄与した。こうしたスキンケア商品は、中国人をはじめとしたインバウンド客の爆買いの対象となった。

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