ソフトバンク、「後継指名」に透ける危機感 世界企業へ向けて投資加速だが課題も

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孫社長は19歳のとき「20代で名乗りを上げ、30代で軍資金を貯める。40代でひと勝負かけ、50代で事業を完成し、60代で継承」と決めた。最後の難関も予定どおり実行できるか

「事実上の後継者指名ということか」。記者の問いに対し、孫正義社長は「答えはイエス」と明言した。

5月11日に行われた2015年3月期の決算会見で、ソフトバンクは6月に、ニケシュ・アローラ副会長が代表取締役副社長に就任する人事を発表。同社では長年、カリスマとしてグループを率いる孫社長の跡継ぎ選びが、最大の課題になっていた。常々60代での引退を口にしてきた孫社長は現在57歳。「まだ引退するつもりはないし、第一線で経営を継続していく」としつつも、後継候補を明らかにしたのは初めてだ。

「インターネットのテクノロジー、ビジネスモデル、人脈について、私をはるかに上回る才覚を持っている」と、孫社長が評価するアローラ氏は、インド出身の47歳。通信業界のアナリストを経て、独Tモバイルの取締役や米グーグルでナンバー2に当たるCOOを務めた、超トップクラスの人材だ。5年ほど前から親交があり、孫社長が自ら口説き落とした。アローラ氏も孫社長を「ビジネスの革新者」と評する。

「異常に頭がいい」アローラ氏

2014年10月、副会長としてソフトバンクグループに入ったアローラ氏は、ネット分野の戦略投資を担当する、「ソフトバンクインターネットアンドメディア」のCEOに就任。同月には米映画会社やインドのECサイトなどに対し出資・買収を連発してきた。

二人はつねに行動を共にしてきた。月の半分は直接顔を合わせて、海外へ一緒に出張する機会も多い。「朝起きて真っ先に電話するのが彼、寝る直前に電話するのも彼」と孫社長は笑う。

記者の質問に答えるアローラ氏

アローラ氏の才覚はほかの幹部も認めるところ。「異常に頭がいい。ピンポイントで痛いところ、聞かれたくない数字を聞いてくる。答えると『終わっている。どうするのか』と突っ込まれる」(ヤフーの川邊健太郎副社長)。

持ち株会社であるソフトバンクは、7月1日に「ソフトバンクグループ」に社名を変更し、グループ経営の姿勢を明確にする。「第2のステージとして“世界のソフトバンク”に生まれ変わる。ネット分野を中心に買収や投資、売却が頻繁に起こるだろう」(孫社長)。アローラ氏の人脈で海外の人材を迎え、投資も加速、真の意味でグローバルカンパニーに脱皮する算段だ。

ただ、意気揚々と新たなステージへの突入を宣言したものの、2016年3月期の業績予想は開示されず、具体的な成長戦略も示されていない。孫社長は実質的な増収増益を続けると説明するが、先行きが明るいとはいえない。

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