円高転換のタイミング見極める「3つのポイント」 今のドル高にはいつか終止符が打たれる

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日本がアメリカ債を買う場合、円を売ってドルを買い、そのドルでアメリカ債を購入する手順となる。シンプルに考えて、アメリカの戦争が予見されるなら、為替市場ではドル買いが発生しやすい状況となる。例えば、2022年も、直前までロシアによるウクライナ侵攻などあり得ないといった評論が多かったが、ドル買い意欲が非常に強かったのを見るにつけ、開戦間近だろう、といった予測が立てられた。

かつてアメリカ国債投資に関しては、中国が日本を上回った時期もあった。しかし、米中対立が顕著となってから、中国は意図的にアメリカ国債の保有量を減らしてきている。言うなれば金融分野での米中の「持ちつ持たれつ」の関係解消に中国は動いてきたという見方もできよう。

ロシアも外貨準備におけるドル割合を引き下げ

脱ドル依存でいうなら、このたびのウクライナ侵攻を見越してか、ロシアも外貨準備(通貨当局の管理下にあるすぐに利用可能な対外資産)に占めるドルの割合を4年前の40%超から16.4%まで引き下げてきていた。

使い道が狭まるであろうドルをあらかじめ減らしておくことで、欧米による経済制裁の影響を最小限に抑える手回しを着々としていたわけだ。こうした各国の動きもあって、このところは日本がアメリカ債の保有比率のトップとなり、日本がアメリカを支えている格好となっている。

2023年8月、日銀は長期金利の変動幅を1%に拡大したが、その後も日銀の緩和姿勢に変更はなく、長期金利が4%前後のアメリカとの間には依然として金利差が存在する。そのため金利を稼げる同盟国アメリカの国債購入は、日本側にとっても旨味がある。

そして、日本の金利を常にアメリカよりも〝低く〞設定したほうが、金利差によるドル買い、つまりアメリカ債購入の流れがつくられ、アメリカの借金の肩代わりをしやすくするのには都合がよい。日米両国の金利差は借金大国「アメリカ」のファイナンスにとっては実に〝心地よい〞金利体系と言えるだろう。

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