「しんちゃん3Dアニメ」製作に7年かかった舞台裏 ほっぺのもちもち等、しんちゃんらしさを表現

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――今回の作品は3DCGアニメではありつつも、いわゆるディズニーやピクサーのようなCGアニメのキャラクターなどとは違い、どこかいつものセルアニメのような、しんちゃんらしさを感じたのですが。そのあたりは意識されたのでしょうか?

畑中:開発期間中は、それこそピクサーっぽい感じだったり、いろんなパターンを試してみたんですが、そこは響かなかった、ということですかね。

初期段階の3Dモデリング画面。当初はディズニーやピクサーのようなテイストも検討されていた(C) 臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会

いろんなパターンを試していくうちに、予告編でも流れていたような、白黒の初期テストフィルムができあがった。これはいろんな方に、こういうことだよねと響いた感じはありました。そこからパイロット版を作るタイミングでデザインを固めていったわけです。

しんちゃん
中期段階における白黒のテストフィルム。このあたりから方向性が定まってきた。(C) 臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会

そうした中で今の見た目ならばファンの方にも受け入れていただけるのではないか、という形に落ちついたのかなと思います。

ただ先ほどセルアニメっぽさがあるというご指摘があったんですが、実は輪郭線を除くと、割とオーソドックスな3DCGの作り方をしています。普通にライティング(※3DCGの仕上げ工程のひとつで、光源を決めて、画面の最終的な見映えを決める作業のこと)もしてますし。ですから2Dっぽさを担保しつつも、裏では実は結構3D的なことをやっている作品なんです。

吉田:最初に王道の3DCGのモデルを見たときは、「まあ、こうなりますよね」という感じで。それが受け入れてもらえるような気がしなかったので。後に今のルックになるきっかけとなった、白黒のモデルが出てきたときにはこれはすごいなと思いましたし、このアプローチは新しいぞと思いましたね。

畑中:吉田さんからも、2D作品との差別化はしてほしい、ということをずっと言われてきたので。質感だったり、いろんなものを含めて、パッと見はセルアニメっぽいですが、ちゃんと3Dアニメを作っているという認識でつくらせていただきました。

ほっぺの「もちもち」の動きを表現

――今回目指した3Dらしさとは?

畑中:今回の白組のキーワードは「ツヤツヤもちもちカラフル」でした。「ツヤツヤ」というのは、メガネの反射だったり、そういうものを取り入れたということですね。2Dの手描き作品になると、またテイストが違ってくると思うんですが、「ツヤツヤ」は3Dが得意とする表現なので、それを取り入れています。

しんちゃん
本作をつくる上での白組のテーマは「ツヤツヤもちもちカラフル」だった。(C) 臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会

「もちもち」というのは、しんちゃんや子どもたちのほっぺなどがもちもちして、優しい感じで、というところを目指した質感になります。あとは動きですよね。「もちもち」とした動きを心がけました。そして「カラフル」はやはり全体的に3D映えするカラフルなトーンを作っていくということですね。

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