有罪になったらトランプ氏は大統領になれるのか 「国民の裁き」次第で恩赦も、選挙が運命を握る

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トランプ氏の起訴を順番に並べると、

(1)ニューヨーク州における口止め料支払いを巡る記録改ざん疑惑(4月)
(2)機密文書の不正保持・開示疑惑(6~7月)
(3)議会乱入事件と2020年大統領選を覆そうとした疑惑(8月)
(4)ジョージア州の大統領選投票集計妨害疑惑(8月)

うち(2)と(3)については米司法省ジャック・スミス特別検察官による捜査で、残り2件はニューヨーク州マンハッタン地検とジョージア州フルトン郡地検による捜査だ。

4件の起訴を累積すると最長717年の刑期となりうる。大統領経験者のトランプ氏が一般の刑務所に収監される可能性は極めて低いが、フロリダ州の私邸「マール・ア・ラーゴ」で自宅軟禁となる可能性などは残されている。

大統領は自分を「恩赦」できるのか

いずれの起訴についても、今後、法廷で審理される見通しだが、最終的にトランプ氏の運命を決めるのはアメリカ国民となるかもしれない。なぜなら、仮にトランプ氏が2024年大統領選で勝利し、裁判が続いていた場合、トランプ氏管轄下の司法省は起訴を取り下げ、スミス特別検察官も解任するからだ。

仮にトランプ氏が大統領に就任する前に有罪判決が下されていたら、就任後、トランプ氏は自らに恩赦を与える可能性が高い。

トランプ氏は今後どうなる

恩赦をめぐっては、ニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任する直前の1974年、司法省法律顧問室が「大統領は自らに恩赦を与えることはできない」との意見書を残している。ただし、憲法修正第25条第3項に基づき、「大統領は職務遂行が困難な場合、一時的に副大統領が大統領代行となって、その際に恩赦を与えることは可能」としている。

同意見書は法的拘束力がない。そのため、もし大統領に就任したトランプ氏が自分に対して恩赦を与えた場合、合憲性が問われ、最高裁判所で争われることになるであろう。

ただし、トランプ氏は選挙キャンペーンで自らの潔白を訴えていたことを国民が支持したとして、恩赦の正当性を訴えるであろう。

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