東京エレクトロン、日米統合「白紙」の誤算 米アプライドとの破談の裏に何があったか

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2013年9月に笑顔で握手した東京エレの東氏(左)と米アプライドのディッカーソン氏

東京エレクトロンが入居する赤坂Bizタワー38階の大会議室。2013年9月に、半導体製造装置で世界首位、米アプライドマテリアルズ社のゲイリー・ディッカーソンCEOと、同3位である東京エレクトロンの東哲郎会長兼社長が笑顔で握手し、経営統合を発表した場所だ。だが、蜜月の終焉は、突然訪れた。4月27日に両社は統合解消を発表。東社長は統合会見と同じ会議室の壇上に一人立ち、統合が「白紙」になった理由を淡々と語った。

「製品構成が重ならないので、(独占禁止法の)対象にはならないと考えていた。しかし、開発中の製品についても対象になるという米司法当局の考え方と、折り合いがつかなかった」(東社長)

両社は独禁法の審査を世界8カ国で申請。シンガポール、ドイツの2カ国では認可が下りたものの、米国や日本、韓国などで審査が継続中だった。実現すれば、半導体製造装置の前工程で世界シェアの約3割を握る超大型統合となるだけに、独禁法の審査には時間がかかっていた。

警戒していた半導体メーカー

ドイツ連邦カルテル庁が公表した資料によると、審査対象は約40もの製品市場にわたる。当初は14年後半とした統合予定は繰り返し延期。水面下では、独禁法で懸念される事業の売却を検討するなど、解決策を模索していた。が、最終的には、両社の提案は受け入れられないとの米当局の判断を受けて、統合を断念せざるをえなかった。

米当局は「半導体産業は米国経済にとって非常に重要で、特に次世代半導体製造装置について、両社の提案は合併で阻害される競争を代替するものとならなかった」との見解を示している。審査では、韓国や中国などの当局とも、連携していたという。

一方、米インテルや韓国サムスン電子をはじめ、半導体メーカーにとって、今回の統合は歓迎されるものではなかった。統合によって、露光装置を除く前工程の多くで高いシェアを持つ巨大な製造装置メーカーが誕生することは、半導体メーカーの主導権の弱体化にもつながりかねないからだ。「破談で半導体メーカーは胸をなで下ろしている」(証券アナリスト)との指摘も聞こえてくる。

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