JR東海はなぜSKE48を"大使"にしたのか アイドルと鉄道のコラボが相次いでいる

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「AMBITIOUS JAPAN!」のステッカーが貼られた新幹線車両(撮影:天田輔)

曲のタイトルはキャンペーン名と同じ「AMBITIOUS JAPAN!」とし、帯型ステッカーを貼った新幹線車両を走らせたり、同曲をアレンジしたものを車内メロディにするなどの試みを行った。

女性アイドルグループを起用しているのは、JR東海だけではない。東京モノレールは昨年4月、博多を拠点に活動するHKT48をPRキャラクターに起用した。「HKT48 モノレール派宣言」と題して、テレビCMや駅ポスター掲示などの展開を行っている。昨年4~5月には、メンバーの指原莉乃さんによる車内アナウンスも放送された。

東京モノレールによれば、「首都圏よりも、むしろ九州のお客様を意識した」という。「認知度を高めて、福岡空港の利用者が羽田空港に到着した際にモノレールを利用していただきたい」(同社)。テレビCMも九州で流すほうが多いという。CMでは自動車より速いことをアピールしているが、「モノレール派宣言」というフレーズからはライバルである京浜急行も意識しているに違いない。

EXILEが起用された意外な事情

男性アイドルグループも負けてはいない。JR西日本は大阪環状線のPRにダンス・ボーカルグループ・EXILEを3月から起用している。メンバー19人は出身地もさまざまで、特に大阪との関係性はなさそうだが、「大阪環状線の駅数も19。この偶然の一致からスタートして、所属事務所にコラボPRを持ち掛けたところ、ご快諾いただいた」(同社)。

3~4月に大阪環状線にラッピング列車を走らせたほか、19駅それぞれデザインの異なるポスターを掲示。19駅でしか買えない限定特典付きCDの販売も行った。

EXILEの人気は全国区である。日本中から大阪環状線に乗りにやってくるような動きはあるか。この質問に対して、JR西日本の真鍋精志社長は「そうなったらいいが、残念ながらそこまではいかない」と言う。

とはいえ、SKE48、HKT48、EXILEに限らず、人気アイドルのファンは全国にいる。ひとたびコンサートツアーが行われれば、長距離移動をものともせず各地の会場をハシゴするファンも少なくない。そのときには鉄道が利用手段の1つとなる。

人気アイドルを自社のPRに活用すれば、そのアイドルのファンが自社に親しみを感じてもらえる可能性が高まる。その先にどのような展開を見据えているのか。その1点に各社の戦略の巧拙が収斂されることになる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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