台湾まぜそば店主が「町中華回帰」で捉えた好機 中華そばが高級ラーメンよりしっかり儲かる訳

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懐かしさと現代風の共存。言葉では簡単に言えるがそうたやすいことではない。新山さんは昭和の中華そばの塩と醤油の使い方に“懐かしさ”を見いだした。

「味が懐かしいと感じるのは、これが“塩”をベースにしている醤油ラーメンだからです。この中華そばは醤油に見えますが、タレには限界ギリギリまで塩を溶かし入れています。醤油は色付け、香り付けのために使い、味は“塩”で決めてあるんです。

昔の職人はなるべく原価がかからないように研究をしていました。タレは醤油100%よりも塩を入れたほうが量が少なくて済みます。タレが30㏄から20ccに抑えられれば原価的にも良いのです。

醤油が効きすぎるとノスタルジックではなくオシャレな気取った味のラーメンになります。あくまで“塩”で味を決めることでこのノスタルジックな中華そばが完成しました」(新山さん)

本来のラーメン屋の形、古き良き時代に戻す

新山さんは高級志向のラーメンブームから、トレンドは「昭和」に戻っていくと読んでいた。確かに最近はネオノス系(「ネオノスタルジック」の略)と呼ばれる、昭和っぽいラーメンのブームが来ている。町中華のスタイルも必ずリバイバルブームが訪れると踏んでいたそうだ。

「高級志向のラーメンは運営側が本当に大変です。とにかく食材が高騰していて原価がかかるので、はっきり言って商売として儲からない。一方、昭和の中華そばは安い食材で作って安く提供して、しっかり儲かっていた。

食べる側は50年前の感覚がまだ残っています。都会の人は一杯1000円のラーメンを納得していますが、地方では到底難しいのが現状です。稼げない・儲からないでは今後続かないことはわかっていたので、本来のラーメン屋の形に戻そうというのがこの『今池飯店』のコンセプトです。

オペレーションが簡単で、注文したらすぐ出てきてアツアツで美味しい。これが町中華の基本です。一度古き良き時代に戻そうということですね」(新山さん)

高級志向のラーメンでは、高級かつ希少な食材を使うことが多く、仕入れの面で非常に苦しくなることがある。ブランド豚、鶏や高級海産物などの値上げの影響をモロに受け、それがそのまま原価に大きく反映してしまうので、利幅がどんどん厳しくなるのだ。

そして、こういった高級ラーメンの場合、素材のうま味が命なので、代わりの食材を使うことも難しく、つねに原価と戦い続ける運命になりやすい。

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