女子バレー・中田久美、五輪敗退後の苦悩と再起 半年実家に引きこもりから、大学院で学ぶ道へ

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そんな状態から少しずつ抜け出し始めたのが2022年春。2018年にいったん中断していた東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)に通うようになり、自然科学から哲学、宗教、天文学、経済学などあらゆるジャンルの本を読むなど、バレーボールから完全に離れた生活を送ったことで、中田さんは前向きな気持ちを取り戻していった。

特にフランス哲学の教授から「全てを受け入れて、次のステージに踏み出すことも変化なんじゃないか」という言葉をもらい、座禅の老師からも「あなたはよく頑張りました」と背中を押されたことで、自分が必死に取り組んできた代表監督の5年間をポジティブに捉えられるようになったという。

東大での学びは半年間で終了。首席で卒業した中田さんは遠ざかっていたバレーボールと再び向き合い始めた。今年3月にVリーグ3部・フラーゴラッド鹿児島のエグゼクティブ・ディレクター(ED)に就任。本人は「バレーボール界に戻るのはまだ早い」と考えていたが、クラブ代表や永山由高市長からの度重なるラブコールを受け、決断に至った。

「地域とスポーツの関わり方で何か新しい形ができれば、それはそれでバレーボールへの恩返しになるんじゃないかなと考えましたね。鹿児島は競技人口が全国でトップ2に入りますし、バレーボールに携わる子供が少なくなっている中で、いい発信ができたらいいなという思いもありました」

修士論文の執筆に集中

中田さんは今年4月からは筑波大学大学院・体育研究科にも在籍。現在は自身を客観視できる状態に戻っている。

「私はバレーボールが好きで、親の反対を押し切って入った世界で、15歳で日本代表に入った時から全力でやってきました。選手としてもそうだし、監督としてもそうだった。最後、代表監督までやらせていただきましたし、本当に頑張ってきてよかったなと今は思っています。

現在は筑波大学の勉強が第一で、2025年春までの2年間で修士論文を書かないといけないので、そこに集中していきます。テーマはまだ決まっていませんが、あまりほかの人がやっていないことにチャレンジしたい。選手の内面的なことにも興味がありますし、女性アスリートのコンディショニングや強化についても考えられます」

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