アメリカの景気は、本当に夏から持ち直すか 楽観的なFRBは年内利上げを示唆

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インフレ率も依然として低い。デフレ懸念は遠ざかったものの、FRBが健全と見なす年2%の物価上昇率をかなり下回っている。またウォルマートのような大手企業が賃上げを発表したことが次々と報じられた割に、賃金の上昇率も低いままだ。

景気減速は一時的?

それでもこのFOMC声明によれば、今回の景気減速は一時的だという可能性がある。昨年と同じように夏に成長が加速して冬の遅れ(昨年はもっと減速した)を取り戻すことが期待されている。「生産高と雇用の伸びは第1四半期に減速したが、委員会は引き続き適切な緩和政策によって経済活動が緩やかなペースで拡大するものと予測している」と声明にある。

FRBは短期金利引き上げの開始時期には直接言及しなかった。短期金利は2008年12月からゼロに近い水準に保たれている。6月のFOMC会合で利上げの検討を始めるともいうが、アナリストの間では9月かそれ以降までFRBは行動を取らないだろうという見方が一般的だ。

このFOMC声明は10人のメンバー全員の賛成を得た。

輸出も設備投資も減った

国内経済の成長は世界経済の減速によっても抑制されている。米国の輸出企業はドル高に苦しんできた。西海岸の港湾施設では労働争議により物流が停滞し、その影響でも貿易は縮小した。輸出は第1四半期に7.2%減少し、GDPは純輸出により1%ポイント近く押し下げられた。

企業投資の急減も第1四半期GDPに響いた。一部の専門家はエネルギー産業で支出が大幅に削減されたためだと見ている。原油価格の下落を受けて、油田の掘削業者や産油企業が投資を手控えるからだ。その一方で企業の在庫は積み増しされてGDP値を押し上げることになったが、それで第2四半期の予測値を下げるというアナリストたちもいる。

公共部門の支出は意外なほど減少した。州や地方自治体の財政支出は2012年第1四半期以来の大幅な減少率となった。昨年夏からガソリン価格が下がり始めたというのに個人消費も低調だ。GDPの約3分の2を占める個人消費は、昨年の第4四半期の4.4%増に比べて今年の第1四半期には1.9%伸びただけだ。

アンダーソンによると、消費者はガソリン価格の低下で助かった分をカード債務の返済や貯金に回している可能性が高い。年内には積極的に消費するようになって経済成長を促すだろうと彼は言う。

商務省によるGDP統計は3回にわたって発表される。最初の速報値は修正されることが多く、改定幅は平均1.2%ポイント程度。今度の改定値(2次速報値)の発表は5月29日の予定だ。

年初に出足が遅いといっても、気候が暖かくなればいい知らせが届くはずというFRBの見通しには、うなずく向きが多い。「鈍化が甚だしく強調されたものと考えている。第2四半期には巻き返しがあると思う。もちろん答えが出るのは先のことだが」と、調査会社ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(ニューヨーク州バルハラ)の首席米国担当エコノミスト、ジム・オサリバンは指摘した。

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