アメリカで「所得再配分論」が不人気なワケ

所得格差が拡大しても、それを容認

米国では所得格差が拡大しているにもかかわらず、富裕層の増税議論が盛り上がらない(Mark Makela/The New York Times)

米国では所得の格差が拡大しているのだから、金持ちにもっと税金を払わせるべきだと考える人が増えてもおかしくはない。しかし、不思議なことに、ここ数十年ほどの間に起こっているのは、ほぼ正反対の状況だ。

世論でも政策でも、富裕層への増税は問われず

1970年代以来、インフレ調整済みの値で見ると、中間層の所得は伸び悩み、一方で富裕層の所得は大きく伸びてきた。つまり、富と所得の格差は拡大してきた。

しかし、政府が所得を再分配すべきか、もっと具体的に言うと、金持ちにさらに税金を課して、そのおカネを貧困層や労働者クラスに回すべきかに関しては、米国人の見解は1970年代以来ほとんど変わっていない。むしろ、調査によっては、再分配に懐疑的な人が増えていることも示される。

言い換えると、理屈のうえでは富裕層から吸い上げられる資金が増えているにもかかわらず、米国人が実際にそうしたいと思う気持ちは消えてしまったということだ。

こうした傾向は世論調査に表れているだけではない。大統領候補が掲げる政策にも、議会が制定する法律にも表れている。1980年には、米国で最も所得の高い夫婦の場合、21万5400ドルを超える所得にはすべて70%の税金が課せられていた。これを現在の価値に直すと、54万4000ドル超の所得に対する税率が70%だった、ということになる。

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