「貧困大国」アメリカは、衰退していくのか 人気エコノミスト中原圭介氏に聞く【前編】
アメリカの庶民の生活は苦しくなっている
三井:中原さんは、新著で「日本はアメリカの経済政策を後追いしてはいけない」と警鐘を鳴らしていますが、まずはアメリカの格差の現状についてお伺いしたいと思います。
中原:世界経済で今のところ、唯一好調を維持しているのがアメリカ経済ですが、アメリカの社会全体を仔細に見ると、表面的な好調さとは大きく異なる姿が見えてきます。実態として、アメリカの庶民の生活は、GDPなどの経済指標の好調ぶりとは裏腹に、とても苦しい状況にあります。
アメリカ商務省の国勢調査局では、1967年以来、世帯所得別(所得上位5%、上位20%、下位60%、下位40%、下位20%)の毎年の平均所得のデータをとっています。それを元に各所得帯の平均所得の推移を知ることができます。
そのデータからわかるのは、過去のアメリカの経済成長は国民の所得下位60%の世帯に属する人々にはほとんど還元されておらず、ひたすら上位の人間が所得を伸ばすことによって成し遂げられていたということです。
アメリカ国民の平均所得の推移をみると、名目では右肩上がりに増えているのですが、実は増えた分のほとんどは上位数%の高所得者たちが稼いでいて、庶民の家計は全く豊かになってはいないのです。
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