なぜ安倍政権は間違った政策をやめないのか 「エネルギー革命の果実」を享受できない日本

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エネルギー革命が起ころうとしているときに無理にインフレを起こす必要はない。安倍政権の下では豊かになるチャンスを逃すことになりかねない(撮影:尾形文繁)

私はこれまで拙書や連載記事等で「デフレと不況の関連性はない」と繰り返し主張してきましたが、前回のコラム「デフレになると、本当に不況が来るのか」でも、私と同様の主張をしているアンドリュー・アトキンソン氏とパトリック・J・キホー氏の論文「デフレと不況は実証的に関連するのか?(2004年1月発表、原題DEFLATION AND DEPRESSION:IS THERE AND EMPIRICAL LINK?)」を紹介しました。そして歴史的な視点から「デフレと不況の関連性はない」ことを明らかにしました。

BISも「デフレと経済成長率の関係性は低い」と結論

筆者の最新刊。格差大国アメリカを追う「日本のゆくえ」はどうなるのか

実のところ、前回のコラムを書いた後、私は国際決済銀行(BIS)が3月18日に公表した論文「デフレのコスト:歴史的な展望(原題 The costs of deflations : a historical perspective」の内容を知って、経済学の世界の古い体質が徐々に壊れつつあるという事実を実感することができました。この論文の中では、長い経済の歴史を検証したうえで、「デフレと経済成長率の関連性が低い」と、私の主張と同じ結論を導き出しているからです。

この論文をきっかけにして、アメリカ主流派経済学の唱える「デフレ=不況」という間違った学説について、正しい分析に基づく議論がされることを切に望んでいるところです。というのも、間違った常識を信じ込んでいた人々もそのような状況になれば、無理にインフレを起こすことがいかに愚かな政策であるのか、理解できるようになっていくと思うからです。

いずれにしても、歴史的な視点でデフレを眺めると、アメリカ経済学の主流派が主張する「デフレ=需要不足=不況」という学説とは全く異なる姿が見えてきます。

18世紀後半から19世紀終わりにかけての英国の産業革命隆盛期では、実は、そのほとんどの期間が長いデフレの時代でした。当時の卸売物価の統計を見ると、物価は1810年代前半をピークとし、1890年代半ばまで断続的に下落していることがわかります。

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