ネパールへの自衛隊展開は、なぜ遅れたのか 長距離輸送機の調達戦略に問題あり

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防衛省が開発を進めるC-2輸送機(出所:航空自衛隊岐阜基地)

自衛隊は、C-2の国産を選択した結果、長距離空輸能力で不具合を抱えている。長距離輸送機を持たないため、空輸展開によるタイムリーな災害援助、国際貢献、重量物輸送をできない状態にある。

そして、この長距離輸送能力の不備はいつ解決するか分からない。C-2の開発は遅延しており、いまだに量産機は完成していないためだ。もともと航空機開発には時間がかかるもので、予定も一般的に遅れ気味になる。だがC-2の場合はすでに開発延長を3回も繰り返している。これまで順調でなかった開発が、今後は順調に進むとは考え難い。

量産機完成以降も、おそらくスムーズには行かない。C-17が日本にとってすぐに使える機体であったこととは異なり、C-2は運用実績がなく、すぐに活用できる状態とはならないためだ。

2016年度中に引き渡されるとされるC-2量産機も、当座は運用試験用に留まる。部隊引き渡しのあとも、大小問わず、多数の問題点が見つかることは避けられないためだ。しかも少数しか生産しないため、ある程度のトラブルが出尽くすまでに時間がかかる。おそらくは2020年近くまでは安定した運用は望めない。

これはC-17を導入した場合と比較すると、対照的である。C-2国産を決めた2000年時点でC-17購入を決定していれば、2005年には導入できたのである。また、導入後には早期に運用可能となる。米軍の大量配備以降であり不具合の洗い出しは済んでおり、操縦や整備といったマニュアルも完成しているためだ。

つまり、C-17を配備していれば、現在の自衛隊ジブチ駐留部隊への航空輸送や、かつてのハイチPKOそして今回のネパール大地震で活用できたのである。

調達費用もC-17のほうが安価

調達費用でも、C-17のほうが安価に済んだ。C-2には既に4000億円が投入されている(これまでに開発費を2500億円以上使用し、また完成前にもかかわらず、既に8機分で約1500億円分が発注されている)。C-17を1機300億円としても、これまでの支出4000億円でC-17を13機は購入できた計算になる。

C-17が13機もあれば、海外輸送の所要は問題ない。海外派兵が常態化している英国でも保有するC-17は8機だ。日本の遠距離輸送機としては、不足するものではない。

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