ネパールへの自衛隊展開は、なぜ遅れたのか 長距離輸送機の調達戦略に問題あり

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C-17は貨物室はC-2よりも2.3倍ほど容積が大きい。高さは4メートルとほぼ同じなので、面積としても2.3倍だ(写真はC-17の貨物室の様子、米国防総省HPより)

利点は多い。なにしろC-17は整備補給体勢が確立されている。部品交換時期の見極めや供給体勢も確立しており、海外でトラブルがあっても米軍に泣きつけるのである。この点でもC-2と相当の差である。

そして、このC-17導入は後知恵の絵空事ではない。輸送機決定の時期には、C-2開発とC-17導入の間で相当の競争があった。「C-17では自衛隊の要求性能に合致しない」とする意見が勝ったわけだが、政府調達では、要求性能を満たしているかどうかは意味がない。結論に誘導するために要求性能自体が操作されるためである。特に航空機は予算規模が大きいため、政治的な関与の度合は大きくなる。

どのようにすれば最善の策と言えるのか

では、どうすればいいのだろうか。今後のことを考えれば、日本は今からでもでもC-17を購入するべきである。

なぜならば、C-2が完成したとしても輸送力が不足するためだ。自衛隊の海外活動は本格・大規模化しつつある。その結果、C-2は完成前の現時点で能力不足になってしまっている。

C-2開発の決定は2000年である。この時期は、自衛隊の海外派遣は始まったばかりで、中身もPKO程度に過ぎなかった。このため、C-2はその所要に合わせた輸送機として計画されていた。

しかし、2000年以降に自衛隊の海外派遣は量も質も拡大している。国際貢献としては、インド洋やイラク、ソマリア沖海賊対処が始まっている。これは従来以上に大規模であり、長期間継続するものであった。他国戦闘部隊への兵站(へいたん)支援や、日本自身が海外基地を建設するといった意味で本格的な任務である。

また災害派遣・人道援助も、インドネシアやハイチ、フィリピン派遣のように大規模、即時投入の傾向が進むようになった。

ところがC-2の輸送能力は従来通りである。C-2は9000km近い長距離輸送に耐えられるとしているが、その場合には12トンしか搭載できない。これは、かつてのPKO的な任務に合わせた任務であれば充分かもしれない。だが、海外派遣の本格化により重輸送ヘリや重機の輸送所要が生まれた今日では、輸送能力としては不足している。

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