安倍首相の演説、米紙はどのように報じたか 45分間に及んだ「歴史的演説」の突破力

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潜在的打撃となる可能性があるのは、影響力があり強硬な保守派である共和党のジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州)が、権限付与に向けて迅速な投票を行うことに懸念を表したことだ。中間層の有権者に訴えかけようとしている共和党にとって、それは的外れだと同氏は主張している。

「われわれはここ7週間、イランとのひどい取引について大統領を批判してきた。それなのに、全力を尽くして貿易法案を通し、大統領に貿易協定を交渉する権限を与えようというのか」とジョーダン下院議員はラジオ番組で訴えた。「それが、政治的に筋が通っているだろうか。少しの間政策を忘れて、生の政治を考えてみてほしい。本当に筋が通るだろうか」。

慰安婦問題についても言及

安倍首相また、第二次世界大戦の日本軍の略奪行為、特に韓国慰安婦問題についても、その認識を広めるよう驚くほど強く求められた。

カリフォルニア州民主党員マイケル・M・ホンダ下院議員は、数少ない「慰安婦」生存者の一人を下院に招待していたし、フロリダ州上院議員で共和党大統領候補の一人であるマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)も、カリフォルニア州の支援者たちに、自分はもっと心のこもったお詫びを聞きたかったと語った。

実際、安倍首相はここでもまた、具体的ではなかった。

「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものだ」と米議会に向かう前に、ワシントンの第二次対戦記念碑を訪れたことに触れた。「自らの行為がアジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代首相と全く変わるものではない」。

慰安婦に対して歴代首相のお詫びを踏襲し、間接的な言及ながら安倍首相が歴代首相の談話から後戻りするのではないかと恐れていた韓国の政府関係者にとってはほっとするものだったかもしれない。

いずれにせよ、今回安倍首相がもっとも強くアピールしたのは貿易についてだった。同氏がワシントンに着く前、下院歳入委員会委員長でTPPの推進者であるウイスコンシン州のポール・D・ライアン下院議員(共和党)、安倍首相に実質的な譲歩を表明するよう要請した。

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