経産省案「原発比率20~22%」は非現実的だ

どうする電源構成<3> 九州大学・吉岡教授

有識者委員会(長期エネルギー需給見通し小委員会)で委員長を務める坂根正弘・小松製作所相談役(中央)
経済産業省は4月28日の有識者委員会で、2030年の電源構成(エネルギーミックス)の案を提示した。総発電電力量(1兆0650億キロワット時)のうち、原子力発電は20~22%、再生可能エネルギーは22~24%、火力発電は56%程度とした。再エネの内訳は、水力8.8~9.2%、太陽光7%、風力1.7%、バイオマス3.7~4.6%、地熱1.0~1.1%。火力の内訳は、LNG(液化天然ガス)27%、石炭26%、石油3%とした。委員会のメンバー14人のうち大半がこの案を妥当と評価。だが、これまで政府は原発依存度をできるだけ低減し、再エネを最大限導入するとしてきただけに、一部の委員からは「公約違反だ」「再エネは積み増しの余地がある」などの異議も出た。
経産省は前日の27日には、電源構成を決める前提として、各電源の発電コストの試算結果を公表している。それによれば、原発が1キロワット時当たり10.1円以上なのに対し、石炭火力12.9円、LNG火力13.4円、石油火力28.9~41.6円で、再エネは陸上風力13.9~21.9円、洋上風力28.7~33.1円、地熱19.2円、一般水力11.0円、バイオマス(混焼)13.3円、太陽光(メガソーラー)12.7~15.5円、太陽光(住宅)12.5~16.4円などとされた(2030年のモデルプラントを想定)。2011年に行われた前回試算(原発は8.9円以上)と同様、原発が最も安く見えるが、福島原発事故の損害費用(12.2兆円と想定)が今後増える可能性があるため、やはり下限値が提示された。一部委員からは「コストは青天井であり、原子力がいちばん安いと言うのは正確ではない」との意見も出た。
今回の経産省案をどう見るか、経産省の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会の委員で、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員も務めた吉岡斉・九州大学大学院教授(専門は科学史、科学社会学)に聞いた。

再稼働と運転延長を過大想定

――経産省のエネルギーミックスの原案をどう見ますか。

多くの問題点がある。まず、原発比率20~22%というのはあまりに非現実的な数字だ。「可能な限り原発比率を低減させる」という政府公約にも反する極端な内容で驚いている。

国内の原発は、大震災後に福島第一の6基のほか、最近の5基の廃炉決定で43基が残っている。経産省案ではその43基と建設中の3基(島根3号、大間、東京電力・東通1号)のほぼすべてを稼働させ、運転期間を原則40年から60年に延長しようとしている。

しかし、それら46基のうち、実際には稼働できない原子炉が多いと見られる。具体的には、東電の福島第二や柏崎刈羽、東通1号、日本原電の敦賀2号や東海第二、中部電力の浜岡などだ。運転延長にしても原子力規制委員会の審査次第であり、認められるかはわからない。それなのに、経産省案は動かす原発を線引きしないで、全部動かすような想定にしている。つまり「20~22%」というのは、単なる計算から出た架空の数字にすぎない。中身は空っぽであり、非現実的だ。

また、全体の電力需要量を決める際の経済成長率の前提(年率1.7%)に高い政府目標を使っており、過大評価だ。経済成長の実績はそれを大幅に下回っている。もし実績をベースにすれば2割前後の差が出るだろう。2030年にかけての労働人口の減少を考えれば、電力需要は自然減で現状より2割ぐらい減ると考えられる。その分、CO2(二酸化炭素)の排出量も減るはずだ。

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