「マツキヨココカラ」が都市部で強い納得の事情 地方では九州から発祥のコスモス薬品が進撃

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最近、イオングループの一員であるウエルシアがグループのスーパー運営企業イオン九州と組んで、スーパー並みの生鮮、総菜を含めたフード&ドラッグを九州に投入し、今後大量出店していくことを公表した。

この目的は、コスモス薬品の本拠地である九州エリアにおいて、同社にはない生鮮、惣菜の品揃えを持ったフード&ドラッグをぶつけることで、収益基盤である九州を切り崩すことを狙ったものであろう。

すでに九州最大規模の小売業となったコスモス薬品は、この本拠地で安定収益の基盤を確立して、その稼ぎを東進の投資へと注ぎ込んでいる。全国制覇を進めるウエルシアにとって、この新業態の成否は将来を大きく左右する課題かもしれない。

大都市商圏を確実に押さえることにほぼ成功したマツキヨココカラは、地方ロードサイド店舗(駅前、繁華街はあるが)がほとんどなく、地方での大手同士の激しい競争に巻き込まれる心配はない。

これから急速に進行する人口減少によって縮小する地方マーケットを奪い合う大手同士の厳しい競争から離れて、その影響から生まれてくるM&A案件を是々非々でピックアップするということも可能なのだ。

中部地方のシェア変動が注目される

しかし、大手各社は今後必ず来るコスモスとの郊外決戦を踏まえた経営判断を行うことになるが、この点でツルハは大手の中でも最も有利な環境にあるかもしれない。

ツルハの本拠地である北海道、東北はコスモスとの本格対決は最後であり、西の同盟者(ハーティーウォンツ、レディ、杏林堂など)を支援することで対抗することが可能だからだ。

こうした考え方からすれば、コスモスが今後急速に増殖し、また、フード&ドラッグ(クスリのアオキ、ゲンキーなど)が急成長し始めている中部地方のシェアの変動が注目される。

複数のフード&ドラッグ(コスモス、ドラッグストアモリ、ダイレックスなど)に席巻されている九州では、多くのドラッグストアが姿を消した。強力な基盤を持つ大手スギ薬局やリージョナルトップであるバローグループ(中部薬品)がどのような作戦で対抗するか、業界では大きな関心事になっているはずだ。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、慶應藤沢イノベーションビレッジでベンチャー支援活動を開始、近年は地方創生支援活動も実施中。並行して、流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+ITなどで執筆、連載中。

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