しまむら「どん底」から3年で復活遂げた3つの秘策 79歳「中興の祖」が再登板、商品改革にも大ナタ

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2つ目は、中興の祖である当時79歳の藤原秀次郎相談役を取締役に復帰させたことだ。「社長就任時に託された使命は主に2つ。業績回復と、しまむら商売の“原理原則”を再徹底することだ。そこで、藤原に経営への参加をお願いした」(鈴木社長)。

藤原氏は1970年に前身の島村呉服店に入社し、現経営陣の中では断トツの最古参。その後1990年に社長に就任し、埼玉の小さな衣料品店だったしまむらを大手チェーンに育てた「中興の祖」と言われる存在になった。2011年に取締役を退任したが、鈴木社長に乞われて2020年5月、経営へ復帰した。

藤原氏は取締役会議から経営会議まで出席し、商売の原理原則について説いて回った。しまむらの成長基盤を作った元社長が発する言葉は、どれも重みがある。現在も取締役として週2~3日出社しているという。

しまむらの客層が「若くなった」

原点に立ち返ったしまむらは、鈴木新体制に移行してからの中期経営計画で商品力や販売力の見直しに着手。鈴木社長は「当社がここまで成長できた要因は、ひとえに商品力。基本を徹底するため、まず商品を強化した」と語る。

しまむらは婦人・紳士から寝具まで取り扱い商品は幅広い。その中で重点的に改革を進めたのが、①PB(プライベートブランド)商品、②サプライヤーとの共同開発商品、③コラボ商品の3つだった。

PB商品では涼感など機能性を訴求する(撮影:風間仁一郎)

1つ目のPB商品では、主幹ブランドの「CLOSSHI(クロッシー)」を軸に、ベーシックカジュアル衣料や肌着・寝具などを展開し、売上高比率は約2割。涼感や保温性など機能性を打ち出した商品に加え、最近は付加価値をつけた高価格帯も拡充した。円安・原材料高が逆風の中でも、収益性の確保に貢献している。

2つ目のサプライヤーとの共同開発商品も特徴的だ。しまむら店舗に行くと、婦人服売り場ではブランドネームの看板が立てられた売り場が目に入る。これが、しまむらとサプライヤーが共同で開発しているオリジナルブランドの商品売り場である。

「共同開発ブランドは以前から手がけていたが、色々なブランドを立ち上げては廃止するということを繰り返していた」(鈴木社長)。これを安定的に展開するため、しまむらがターゲットとする年齢と服のテイストをそれぞれ縦軸・横軸にとったマトリックス図を作り、空白を埋めるようにブランド作りを進めた。

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