人工知能制覇を狙うグーグルの野望とは?

「AIの衝撃」を書いた小林雅一氏に聞く

人工知能の未来は、どっちに向かっているのか(イラスト:ツネオMP/PIXTA)
AI(人工知能)への関心が高まっている。自ら学び成長するAI搭載ロボット。その進化を注視してきたウォッチャーが豊富な事例とともに描く、AIの現在と未来。

──近年のAIの「爆発的発達」とは何だったのですか?

それは2006年、ニューラルネット(脳を構成する神経細胞ネットワークを工学的に再現したAI)が巻き起こしたブレークスルーです。それまで動作が遅く応用範囲も限定的で、単に"数学の産物"にすぎなかったAIに脳科学の最新成果が応用され、汎用性とスピードが飛躍的進化を遂げました。音声や画像を自動的に認識する能力が向上して、進化形AIの扉を開いたのです。

これを機に米大手IT企業が開発競争を加速、2012年ごろに多くの画期的成果が出現しました。スマホに向かって「カナダの首相は誰?」と聞くと、「スティーブン・ハーパーです」と答えるおなじみの機能は、2006年の技術革命に端を発してるわけです。

AI研究の歴史は脳の仕組みに接近しては離れるで山谷を繰り返し、現在は1950年代、80年代に次ぐ第3次ピークの真っただ中。スマホ以外でも掃除ロボットやドローン(無人飛行機)、自動運転車など身近な分野でAIの応用が進み、今度こそブームは本物と僕は見ています。

脳の全容解明が本格化 第3次AIブームは本物!

──今後数年間に大きく進化する分野が「自然言語処理」とか。

小林雅一(こばやし・まさかず) ●KDDI総研リサーチフェロー。1963年生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。東芝、日経BP、読売アメリカ、慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所非常勤講師などを経て、2006年より現職。情報セキュリティ大学院大学客員准教授も兼務。『グローバル・メディア産業の未来図』『クラウドからAIへ』ほか著書多数。

スマホも時に珍妙な答えを返してくるでしょ。2006年は脳の視覚野における研究成果、次は言語野でそれをAIに導入すれば、もっと的確に意味を理解して話せるようになる。自動翻訳も精度が増すし意訳だってできるようになる。脳科学とAIが並行して進化していくイメージです。

去年から今年にかけ、欧米日各国が巨額の政府予算を投じ、脳の全容解明プロジェクトを始めています。その成果を脳科学で閉ざさず、AIやITに融合させていく。さらに一歩突き詰めて、僕たちが本当に知りたい、意識とは何か、心とは何かにまで踏み込んで究明しようとしている。そして将来、人間と同等の意識や心を宿すようになった最終形が、「強いAI」と呼ばれるものです。

──「2045年にはAIが人間の知性を超越する」という米グーグルの開発責任者、レイ・カーツワイル氏の予測をどう見てますか?

彼は天才発明家ではありますが、一方で反科学的な不老不死を追求したり、そうとうな奇人。エキセントリックな科学宗教と皮肉る人もいる。

彼の説は半導体プロセッサーの「ムーアの法則」に拠っていて、それだと計算上、2045年ごろにコンピュータの情報処理能力が人間を抜くと。でもはたしてそれだけをもって断言できるのか。まあ面白いことは面白いんですけど。マスコミなどはわかりやすいからよく引用しますが、僕としては、かなりはてなマークがつく。

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