ハンバーガー界の「ラーメン二郎」を目指すバーガーキング!《それゆけ!カナモリさん》

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■ラーメン二郎のごとく信者を創れるか

 前記の「ラーメン二郎」の話。2011年1月26日付東京読売新聞夕刊の記事「ラーメン二郎 ジロリエンヌ 超大盛りペロリ」からその魅力を伝えてもらおう。

『様々なラーメン店がしのぎを削る首都圏にあって、揺るぎない個性で常連客が集う店といえば、「ラーメン二郎」の名がまず浮かぶ。極太麺と豚骨しょうゆの濃厚スープ、山盛りの肉と野菜というインパクト』

『「二郎」は1968年創業。東京・三田の本店は、安さとボリュームで、近くの慶応大の学生たちに愛されてきた。ところがここ10年で、都内近郊にのれん分けの店舗が急増。現在は36店もあり、「ジロリアン」と呼ばれる常連客は、ひいきの本拠地“ホーム”を持ちながらも、他店にも“遠征”して、個性の差を楽しんでいる』

詳しくない人にはコラムの冒頭に記した「ニンニク入れますか?」は「はぁ?」と思ったかもしれないが、同店では店員のその言葉を合図に、野菜やニンニクなどの無料追加具材を客が注文する。「ニンニク入れますか?」、「小(麺の量)・野菜・カラメ(かえし)マシマシ」といった具合だ。初めて訪れた人はそれに戸惑ってしまう。同様に、バーガーキングもトッピングの注文はなれていないとなかなか切り出しにくい。そこで、最初から「全部入り」をメニュー化しているのだ。

ハンバーガー業界第1位は約3300の店舗を持つ日本マクドナルド。次いでモスバーガーは約1400店舗。3位のロッテリアでも約500店舗を展開している。それに対し、一度は日本市場から撤退をしたバーガーキングの店舗はまだ30に満たない。

バーガーキングの狙いは、まず「ラーメン二郎」のように「信者」を増やすことにあるはずだ。それを体現したのが今回の2つの新メニューなのである。小食な者や子どもを寄せ付けない圧倒的なボリューム。さらにトッピング。それを征した時の達成感や充実感が中毒になり、また足を運ぶ。すべての消費者を惹きつける必要はない。まずは「ガッツリ食べたい!」というニーズを持った顧客をコアなファンとして形成し、囲い込むことが狙いなのだ。

規模で勝負すれば圧倒される。それに対抗するために、徹底して特徴を出してニッチャーとしてファンを獲得・維持し続ける。バーガーキングが「ブランドプロミス」としている「HAVE IT YOUR WAY(すべてあなたのお好みどおりに)」。その意図から学ぶべき企業は多いだろう。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2011年4月8日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

金森 努 青山学院大学経済学部非常勤講師

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かなもり つとむ / Tsutomu Kanamori

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
 

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