「勘と経験」から「データ」へ? 変わる自販機販売戦略《それゆけ!カナモリさん》

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「勘と経験」から「データ」へ? 変わる自販機販売戦略《それゆけ!カナモリさん》

 

■こだわりの地産飲料

 2月15日からJR東日本管内のエキナカ飲料自販機acure(アキュア)、NEWDAYS、KIOSK等で販売が始まった桃果汁飲料「モモごこち」。「地産飲料」と銘打って、福島県産のブランド品種「あかつき」のみを使用して作ったという、超こだわりの商品である。販売元はエキナカ自販機を運営するJR東日本ウォータービジネス。同社は2010年から東日本エリア地産の果物や天然水等を、地元企業との共同企画で商品化して主にJR東日本のエキナカで販売・消費する、「地産エキ消」ともいうべき取り組みを行っている。

リニューアルと販売戦略

「モモごこち」は昨年販売された桃の果汁飲料、『もぎたて「んまいもも」』のリニューアル商品だ。同社ニュースリリースで今回のリニューアルのポイントを調べてみる。

「桃の産地を絞り、単一品種に」変更。「ペットボトルをリラックス&リフレッシュが伝わるデザインに刷新。キャップを桃色にし、ネーミングは飲用シーンをイメージした『モモごこち』に」改定した。中味と外見両面からの改定を行ったということだ。

・・・と聞くと、ごくフツーの製品改定に感じるのだが、筆者はこの商品からはただならぬ「気配」を感じたのだ。というのも、昨シーズンの商品「んまいもも」を購入している消費者の姿をエキナカでは随分と見かけた。にもかかわらず、これだけの改定をするということは、何らかの戦略的な意図が隠されているに違いないと思ったからだ。

リニューアルのポイントは・・・

リリース元である同社企画部に問い合わせをしてみた。  「販売期間中での競合NB(ナショナルブランド)主力商品と比較して、週販実績120%。果汁カテゴリーでトップ。当初目標販売数に対して、実績140%」という堂々たる実績。さらに顧客の声も、「他の高果汁の桃飲料と違って、みずみずしくて飲みやすい。さらりと飲めて、本格的な桃の味が楽しめる」と好評であったという。

そんなに実績があり、好評だとすれば、大幅な改定を行う意図が謎である。

産地限定・品種限定というこだわりを強める「中味」の改定は「地産飲料」という同社独自の取り組みからすればわかる。しかし、商品名とパッケージという外見の大きな変更はターゲットが変更されたように思われるのだ。

企画部の回答によると、外見の変化はターゲット変更というよりは、ターゲット像をより明確化したというべき結果であることがわかった。即ち、「メインターゲット=20代~30代の働く女性層、サブターゲット=20代~30代の働く男性層」だという。そして、そのメインとサブの設定こそ、販売データと同社バイヤーの勘と経験のせめぎ合いの結果を表すものであったのだ。

 

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