データで検証!「弁護士は食えない」のウソ

「就職難」と「貧困化」は裏付けられるのか

弁護士は本当に「食えない職業」になっているのか?(写真:アフロディーテ/アフロ)

かつては1年に500人しか受からず、中国の「科挙」に例えられていた超難関の司法試験。司法制度改革によって年間2000人が合格する試験になったとはいえ、それでも難関であることに違いはない。さらに、政府の有識者会議からは、合格者数の目標値を「1500人以上」に引き下げる提言も出ている。

大学を卒業した後、さらに高額の学費を借金で調達し、法科大学院に2年ないし3年通い、卒業後ようやく司法試験の受験資格を得る。首尾よく試験に合格しても、1年間の司法修習期間中は収入がなく、さらに借金がかさむ。修習を終え晴れて弁護士資格を得ても、法律事務所への就職が難しく、多額の負債を抱え、食べていくことすらままならない……。

これが昨今の弁護士を取り巻く環境の定説であり、裏付ける統計もある、とされている。だが、実際に若手の弁護士に会って話を聞くと、この定説とのギャップは著しい。

進路未定者は本当に増えているのか

ごく普通の法律事務所に就職した若手に、「法科大学院の同級生や司法修習の同期にこの定説を地で行くような弁護士がいるか」と聞いてみると、決まって「少なくとも自分が知る範囲では心当たりがない」という答えが返ってくる。それどころか、「かわいそうだの、食えてないだの言われるのは心外だ」とまで言うのだ。

個々人の懐具合は、結局のところ本人にしか分からない。ただ、報道で頻繁に目にする「食べていくこともままならない若手弁護士」を探すことはかなり難しい、というのが実感だ。そこで今回は、定説を裏付けるとされる統計の検証を試みた。

まず、就職難を象徴する統計と言われているのが、弁護士白書に掲載されている「司法修習修了者の進路別人数の推移」である。この統計をグラフ化したものが、「修習期別進路(一括登録時点)」だ。

2000年は修習期間の変更に伴う端境期で修習修了者が急増しているが、2007年以降は新試験実施に伴う合格者数増が主な原因となり、修習修了者数が多くなっている。

この統計が就職難の象徴とされるのは、裁判官、検察官、弁護士以外の「その他」の人数がここ数年増加傾向にあるからだ。旧試験世代の56期生ではわずか9名だったのに、新司法試験世代1期生と旧試験世代が混在していた60期生で102人、66期生(2013年12月に修習終了)では570人に膨れ、昨年暮れに修習を終えた67期生でも550人。その大半が就職出来なかった人数とされている。

しかし、「この統計はあくまで修習終了直後の一斉登録時の統計であって、その申し込みの締め切りは9月。2回試験(修習終了時の考査)が終わってから就活に入ったり、入所した事務所の方針で1月登録になる人は含まれていない」(65期の弁護士)という。

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