データで検証!「弁護士は食えない」のウソ 「就職難」と「貧困化」は裏付けられるのか

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弁護士会費は12月中に登録をすると、たとえ1日でも1カ月分かかる。修習修了が12月も後半になってからなので、12月中の新人の実働日数は数日。通常、弁護士会費は事務所負担なので、1月登録を望む事務所もある。

日本弁護士連合会の調査によれば、修習修了から約2カ月後の時点で、就活中だったり進路が不明な人を進路未定者とするとその人数は66期で68名。66期生全体の3.3%でしかない。修習終了から1年後となると1.7%だ。

つまり、全体の97%は修習修了から2カ月で進路が決まっていることになる。法律領域の転職サイト・リーガルネットを運営するMS-Japanも、「法律事務所のみの求人倍率は概ね0.7~0.8倍と1倍を割る水準。このところ求人を増やしている企業の法務部も含めれば、求人倍率は軽く1倍を超えてくる。法律事務所以外はイヤという人を除けば、むしろ売り手市場だ」と言い、決して「合格しても就職先がない」わけではない。

無論、就職を諦めて弁護士登録をし、即独(すぐに独立し、自身の事務所を設ける)という道を選ぶ人も進路決定者に含まれてはいるが、少なくとも、仕事がなくて登録もしない人が500人以上いるわけではない。

「請求」による登録取消しが10年で3.8倍増?

そもそも、「就職以外にもOJTの機会を得るチャンスはある。弁護士会活動に積極的に参加すれば、即独でも上の世代の弁護士と知り合えて下請け仕事をもらう機会もある。労働環境が劣悪なブラック事務所に就職するくらいなら即独や早独の方がマシ」(前出の65期の弁護士)だという。

次は若手の貧困と就職難双方を象徴する統計とされている「弁護士登録取り消し件数の事由別内訳」である。この統計は、弁護士登録を取り消した人数とその理由を、5つの理由(裁判官任官による請求、弁護士法17条3号、弁護士法17条1号、請求、死亡)別に集計したものだ。

2004年に284人だった年間の登録取り消し人数は、2013年には564人へと10年間で倍増。裁判官任官者は年によって多少のバラつきはあるが、全体の中では非常に少ない。弁護士法17条3号と1号による取り消しは法令違反等によるものなので、本人の意思とは関係ない。この人数も11人から22人へと倍増はしているが、人数自体は少ない。

いちばん伸びているのが「請求」で、91人から345人へ3.8倍増。そして「請求」の大半が「仕事がない若い世代の弁護士で、弁護士会費を支払えないために廃業を余儀なくされている人数」と解釈されている。

だが、その解釈にも疑問がある。高齢や病気を理由に引退する人もいれば、留学期間中弁護士会費を負担したくない人、任期付きで公務員になる人も登録を取り消す。留学なら帰国後、任期付き公務員なら任期が満了すれば再登録をする。

また、任官から10年以内の裁判官や検察官に弁護士業務を経験させるための「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」が2004年に制定されており、大規模な法律事務所を中心に若手裁判官・検事を受け入れている。このため、該当者は職務経験開始時に弁護士登録をし、職務経験が終了してもとの仕事に復職する際には、登録の取消しを行う。

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