鹿島が独り勝ち!ゼネコン決算「明暗」わけた3要因 「毒饅頭」を食らわなかった異次元の受注戦略

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2つ目の要因は、建築事業(オフィスビルや商業施設、工場などの請け負い工事)の利益率だ。下図を見ると、鹿島の建築事業の利益率(売上総利益率)がほかの3社よりも高いことが明瞭だ。

ゼネコン業界は2015年から2019年ごろにかけて、東京五輪関連の特需に沸いたが、その後に案件不足が懸念されたことを背景に、受注競争が激化した。実際のところは、東京五輪後も再開発案件が複数計画されていたものの、ひとつひとつの物件が大型化し、その受注を逃すと収益へのインパクトが大きいことから、大手ゼネコンが工事の獲得に躍起になった。

「毒饅頭」を食ったスーパーゼネコン

選別受注の姿勢を意識していた大成建設でさえも、「結果として、当社もここ(受注競争)に巻き込まれた」(管理本部経理部長の中野雄一氏)という。

シンボリックな大型案件を勝ち取るために、ときには「毒饅頭を食う」といわれるダンピング(不当な安値)受注を仕掛けるスーパーゼネコンもあった。

ヒートアップする受注競争に対して、鹿島は一線を引いていた。最先端の設備が求められる半導体などの工場や需要が底堅い医療関連施設などに受注の焦点を定め、受注時採算の確保を徹底してきた。足元では、ラピダスの北海道千歳市での半導体工場や、キオクシアの四日市工場(三重県)の新製造棟などを受注している。

受注時採算が低いところに、昨今の資材高が加わり、工事利益率の低下に苦慮する大手ゼネコンが多い中、鹿島は主要資材については設計段階からBIM(建築の3次元設計)を活用して、早期に仕様を決めて、早めの調達につなげることで、想定以上に原価が上がらないように努めてきた。

こういった受注・資材高に対する姿勢、そして戦略の相違が、昨今の建築事業の利益率の差につながっている。

業績の格差が生じている3つ目の要因は、貸借対照表に計上されている工事損失引当金だ。

工事損失引当金は将来発生する可能性のある損失に備えたものであり、その分、将来への備えができているとも言える。ただ、工事損失引当金が右肩上がりのときには、採算性を軽視した無理な受注が増えていることを意味する。

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