鹿島が独り勝ち!ゼネコン決算「明暗」わけた3要因 「毒饅頭」を食らわなかった異次元の受注戦略

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さらに、工事損失を引き当てた工事については、工事が進んでも売上高は計上されるが、利益にはほぼ貢献しない(ゼネコンは会計基準に工事進行基準を採用することが一般的)。そのため、工事損失引当金が膨らんだ会社は、手元に利益貢献のない工事が多く、全体の利益水準が当面低くなる懸念があることを示唆している。

こういった事情もあり、ゼネコン業界の経理担当者などは、工事損失引当金の増減を自社だけでなく、他社動向も踏まえて注視している。

3社は利益水準が低い状態が当面続く?

この工事損失引当金でも、大手4社では差が出ている。鹿島は2022年3月期から2023年3月期にかけて、それほど積み増してはいない。

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一方、大成建設は同141億円から478億円と3倍増になった。前出の札幌市の複合ビル工事において精度不良が発覚したことに伴い、是正工事関連の費用が発生。この問題が尾を引き、工事損失引当金が膨らんだとみてよいだろう。

清水建設は工事損失引当金が、2021年3月期の144億円から2022年3月期541億円、2023年3月期654億円と年々膨らんでいる。

同社は「麻布台ヒルズ」(東京・港区、2023年秋開業予定)や「トーチタワー」(東京・千代田区、2027年度竣工予定)といった国内でも有数の超高層の複合ビルを受注、建設している。こういった首都圏の超大型工事は受注競争が一段と激しかったことで知られる。積極的な受注姿勢が工事損失引当金の増加につながっていないか、気になるところだ。

資材高の影響を受けていないときに受注した工事は、今2024年3月期から工事が本格化してくる。当然、受注金額には昨今の資材高上昇分が織り込まれていない。各社ともに、発注者に対して資材高騰分を価格に反映する交渉に乗り出しているが、なかなか引き受けてもらえないのが実情だ。この先1~2年は、こういった利益圧迫要因が残りそうだ。

鹿島の独り勝ちの構図は、当面変わらない可能性がある。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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