アルトターボRSがワークスを名乗らぬ理由 スズキの軽スポーツ、乗って分かった実像

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このところのスズキといえばワゴンRやコンパクトカー「スイフト」のモデルチェンジに際して、外観デザインはあまり印象を変えないキープコンセプトが目立っていた。一方、8代目アルトは印象に残るユニークなスタイリングの採用により、従来のイメージを思い切って変えた。ほかにも大幅な軽量化や、最高で1リットル当たり37.0キロメートル(JC08モード)まで燃費性能を高めるなど、内容を充実させてきた。それにスポーツモデルの「アルトターボRS」を加えたワケだ。

軽自動車市場ではくしくも、オープンスポーツの「ビート」(ホンダ)、「カプチーノ」(スズキ)やガルウィングドアの2シータースポーツ「オートザムAZ-1」が相次いで登場した平成バブルの頃のように、新型スポーツモデルが目立っている。

スズキのスタンスが変わった?

ダイハツは2014年夏に軽オープンスポーツの「コペン」を投入。ホンダはこの4月2日に同じく軽オープンスポーツ「S660」を発売し、大きな話題を呼んでいる。ダイハツやホンダはこれらのモデルの投入を1~2年前から予告していたものの、これらに対して鈴木修会長社長が「軽自動車は貧乏人の乗り物」と発言して物議を醸したこともあるスズキは、SUV(スポーツ多目的車)タイプの「ハスラー」を強くアピールするなど、スタンスが違っていた。

スズキが平成バブル絶頂期に投入した軽オープンスポーツ「カプチーノ」

とはいえ、スズキもここへ来てアルトターボRSを投入したあたり、軽スポーツモデルのニーズの高まりを意識しているといえそうだ。いっそのこと、往年のファンへのアピールも含めて、新生「アルトワークス」を名乗っても不思議ではなかった。

ただ、スズキはそうしなかった。その謎を解くカギは実車そのものにあることを、まずお伝えしておこう。

アルトターボRSのエンジンは、もちろん軽自動車の自主規制枠いっぱいまでパワーを高めている。一方、FF(2WD)の場合で車重を670キログラムに抑えており、動力性能は高いものの、かつてのアルトワークスのようなパンチの効いた刺激的な速さではない。低回転域でのレスポンスと、フラットなトルク特性を重視しており、どちらかというと上質な乗り味だ。

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