運賃無料イベントで見えた地域公共交通の「未来」 とさでん交通「無料・ワンコイン施策」成果は?

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とさでん交通の路面電車。後方には同社のバスも見える(筆者撮影)
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新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、公共交通の利用者が大幅に落ち込み、経営の危機に陥っている事業者も少なくない。高知市を中心に路面電車、バス事業を展開する「とさでん交通」もその1つだ。とさでん交通では、こうした状況の中で利用回復を図ろうと、高知市と協力のうえで2021年度から路面電車とバスの無料デーやワンコインデーなどの取り組みを行っている。

注目を集めた「路面電車・路線バス等無料デー」

最初に無料デーが行われたのは、2021年11月から翌2022年1月までの日曜、祝日と年末年始のことだった。無料デーを行ったことで、とさでん交通の電車とバスは比較的空席が目立っていた日中の便も含めて、終日にわたって立ち席客が出るほどの混雑ぶりとなり、高知県内で注目を集めた。

とさでん交通の利用者は減少傾向が続き、資金繰りも苦しい状況が続いていることから、これまで「利用促進のためのキャンペーンを行いたい」という意向は持っていても限定的な活動しかできない状況に置かれていた。そこへ新型コロナの感染拡大がさらに追い打ちをかけることになったかと思われたが、実はこれが渡りに船となった。国は、コロナ禍における経済対策でさまざまな業種に対して補助金の交付を決定するが、その中の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」が地域の公共交通事業者に対しても適用ができることとなったのだ。

とさでん交通と高知市は、補助金の使い道について何度も協議を重ね、その中で特別切符の販売、ワンコインデーなどのアイデアが出されたが、最終的に電車とバスの無料デーを行うという結論が出された。実施に当たっては、利用者や便数が少なく、乗務員の対応がしやすいということで日曜・祝日とされた。土曜日が外されたのは、土曜日も定期券で通勤・通学をする人が多い傾向があることから、運行の遅れや混雑などの迷惑を掛けたくなかったことや、不利益を被ったと感じる可能性が考えられたためだ。

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