3月に欧米で起きた金融不安とは何だったのか クレジットアナリストの大橋英敏氏に聞く

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2023年4月4日、スイスのチューリッヒで行われたクレディ・スイスの株主総会会場でデモを行う市民(写真・2023 Bloomberg Finance LP)
シリコンバレー銀行の破綻からクレディ・スイスグループの経営不安まで、2023年3月には欧米で金融不安が巻き起こった。不安ムードは後退しつつあるも、クレディ・スイスのAT1債が無価値化するなど波乱もあった。一連の事態をどうみるか。信用収縮の可能性など今後の見通しについて、みずほ証券チーフクレジットストラテジストの大橋英敏氏に聞いた。

健全行なのに破綻したので不安拡大

――3月にアメリカと欧州で起きた金融不安をどう振り返りますか。

今回の金融不安は、アメリカとスイスにある銀行それぞれに特殊な事情があったのがきっかけだ。個別の背景要因があるので、本来は個別銀行の問題という形で片付くはずだが、共通性もあり不安が金融市場全体に広がった。

まずSVBとクレディ・スイスはともに健全行だった。CET1比率(自己資本比率規制の指標)は13~14%あり、すぐに大きな問題があると誰も思っていなかった。ところがアメリカでは、SVBなど複数の銀行が破綻処理された。クレディ・スイスも破綻は免れたものの、AT1債が毀損し、一部はベイルイン(株主・債権者の負担による損失負担)している。

健全行が突然このように経営が行き詰まるところをみて、ほかに同様の金融機関はないかと誰もが不安になり、調べ始めた。それだけの心理的インパクトをもたらした。

この問題は健全行の破綻が続かないという材料をマーケットが確認できるまで続く。だからこそ破綻連鎖を招かないために各国当局は流動性の供給に万全を期したほか、次の焦点とされた米ファースト・リパブリック銀行には大手銀行11行が預金注入で救済するなどの動きがあった。

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