日本では、なぜ「長時間労働」がはびこるのか 欧州赴任中は早く帰宅、帰国後は残業漬け

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たとえば、病児保育事業などを手掛けるNPO法人フローレンスでは「働き方革命」と称した業務改善を行った結果、1日当たりの平均残業時間が15分にまで減少できた。

一つの仕事を二人で担当することを原則としたことで、属人的で非効率な仕事のやり方がなくなり、結果的に社内のすべての業務がマニュアル化された。会議では議題とタスクを「見える化」することで、会議時間が短縮化された。また、チーム内で残業が発生するのは、マネジャーが適切な業務配分をできていないためと認識されるようになった。効率化ばかりではない。毎日の昼礼で社内のコミュニケーションも円滑に行っている。

また、化粧品の通信販売を手掛けるランクアップは、約40人の社員全員が毎日17時に帰る。社員一人ひとりが自分の仕事を「不要な業務」「自分より人に任せる業務」「自分がすべき業務」に振り分け、自分がやるべき仕事だけに集中させる。

通販会社はルーティンワークを外注任せに

ルーティンワークは基本的に外注だ。経理部長もいない。外注先を集めた定例会議を行っているため、細かいことは社員を通さなくても外注先同士で決めていい。

社員には業務内容ではなく使命を言い渡すことで、誰もが自分の裁量で仕事ができるようにした。同社の岩崎裕美子代表は、「うちの社員は全員、何のためにその仕事をしていて、会社にどう貢献しているのか即答できます」と胸を張る。その結果、社員から次々と新しい企画が提案され、いくつもの新事業が生まれつつある。

少子化対策といった大義だけではなく、一企業にとっても女性を含む優秀な人材を確保するには、職場環境の改善は喫緊の課題だ。そのためにも、無駄の多い長時間労働はなくさなければならない。

「週刊東洋経済」2015年4月18日号<13日発売>「核心リポート05」を転載)

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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