原発ではなく「竹発電」で--丹後の宮津で町興し

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放置された竹林は災害の大きな原因

竹(孟宗竹)は繁殖力が旺盛で、管理するのが大変である。放置された竹林は、荒廃して里山の保全に悪影響を与え、災害の原因となっている。

竹の根は密で雨水を吸収しない。繁殖力、成長力が強く、他の樹木の繁殖を阻害する。
竹は用途が少ないだけに放置されることが少なくない。竹林がはびこることになる。悪循環が広がっていた。

野々村社長のチャレンジは、竹がもたらす悪循環を断ち切ろうということを目指している。長崎総合科学大学と九州沖縄農業研究センターが共同開発した竹を燃料とした発電装置1基(3億円)を設置し、6月には本格稼働を予定している。1時間に30キロワットの電力を供給する。

「竹の伐採、搬入、発電と新しい仕事がつくられる。伐採には手間がかかる。それに竹は中が空洞で、搬入面でネックを抱えていた。搬入ではワイヤーを張り巡らし、竹を効率よく運び出せる仕組みをつくった」野々村社長は、そんな苦労を語っている。

小さな発電プラントだが、ともかく新しい産業がスタートして、新しい雇用が生み出されようとしている。

発電プラントの施設整備運転に4名の雇用が生まれた。伐採、搬入でも新しい仕事を生み出している。まことに小さい雇用効果だが、宮津市としても、アウラの野々村社長としても、ようやくここまで来たという思いがあるに違いない。軌道に乗れば、天橋立観光とセットで竹発電プラントの視察に訪れるという経済効果も期待できる。

宮津市の竹発電は、原子力や化石燃料に頼らず、身近な自然にある竹をエネルギー源にしようとするささやかな試みでしかない。福島原発で日本民族が滅亡しかけた今、竹による発電は、小さいにしても、また効率がよくないにしても貴重な試みということができるかもしれない。
(東洋経済HRオンライン編集部)

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