JR西「新型やくも」開発陣が明かすデザイン秘話 「銀河」の川西氏監修、性能・機能とのせめぎ合い

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新型やくも開発スタッフ
JR西日本の新型「やくも」273系のイメージ画像を囲む開発スタッフたち。左からJR西日本車両部車両設計室の斉木博之氏、渡部広和氏、および同車両課の若杉景祐氏、(写真:JR西日本)
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岡山―出雲市間を結ぶ特急「やくも」に2024年春、JR西日本が新型車両を導入する。車両形式は273系。4両1編成を11編成、計44両を製造する。総投資額はおよそ160億円。車両の製造を担うのは近畿車両だ。

特急やくもの運行が始まったのは1972年3月。山陽新幹線岡山開業を契機に、岡山経由で新幹線と乗り継ぎ、京阪神と山陰を最速で結ぶことができる列車としてスタートした。やくもという名前は島根県東部の旧国名・出雲にかかる枕詞の「八雲(やくも)立つ」にちなんだ。

当初は気動車で運行していたが、1982年の電化に伴い、381系電車がやくもとして使われることになった。381系はカーブでも高速で走れる振り子装置を装備しており、スピードアップにもつながった。

新車は「国内初」の振り子装置搭載

それから年月が経ち、381系も老朽化。新たな車両を導入する時期が到来したと判断したJR西日本は、2019年頃から置き換え車両の検討を始めた。新型車両の仕様は数年がかりで行われる。今回は、まず性能面、続いてデザインについて検討された。

性能面の大きな特徴は、381系よりも高性能の振り子装置を導入することだ。これは国内初の「車上型の制御付き自然振り子方式」で、車上の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、適切なタイミングで車体を傾斜させる。従来よりも乗り心地が改善するという。

「鉄道を好きな人が見れば、今回の車両の見た目は287系などの当社の特急車両とまったく同じに映るかもしれない。しかし、断面を見比べるとまったく違う」と、JR西日本車両部車両設計室の斉木博之氏が話す。まず、車両の下部に新たな振り子装置を搭載していることに加え、振り子装置によってカーブで車体が傾いたときに地上設備に接触することがないよう、細部において各所で変更を施しているためだ。

JR西日本 287系
特急「きのさき」「こうのとり」「くろしお」などに使われているJR西日本の287系特急電車。今回の273系は287系と形が似ているように思えるが、実際はさまざまな点で違いがあるという(写真:F4UZR/PIXTA)
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