真の父親は誰?「精子提供」で生まれた子の苦悩 『私の半分はどこから来たのか』大野和基氏に聞く

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『私の半分はどこから来たのか』著者の国際ジャーナリスト 大野和基氏
大野和基(おおの・かずもと)/国際ジャーナリスト。1955年生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。79〜97年に米国滞在。ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。『代理出産─生殖ビジネスと命の尊厳─』、『「常識」が通じない世界で日本人はどう生きるか』など著書多数。(撮影:尾形文繁)
夫以外の第三者から提供された精子を使って妊娠を試みる、AID(非配偶者間人工授精)。夫が無精子症の場合などに用いられる不妊治療だが、生まれた子どもがその事実を知ったとき、アイデンティティーの半分が「空白状態」となり、生物学上の父を探して何も手につかなくなってしまうケースがある。
私の半分はどこから来たのか AID[非配偶者間人工授精]で生まれた子の苦悩
『私の半分はどこから来たのか AID[非配偶者間人工授精]で生まれた子の苦悩』(大野和基 著/朝日新聞出版/1760円/176ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──三十年来、生殖補助医療を取材してきました。

きっかけになったのが、1986年に米国ニュージャージー州で起きた「ベビーM事件」。代理出産をした母親が生まれた子どもを依頼者夫婦に引き渡さず、3カ月にわたって逃走劇を繰り広げたというものだ。私はこの裁判の傍聴に足しげく通ったのだが、裁判官が最後に言った「世の中にはお金では買えないものがある」という言葉が実に印象的だった。

生殖補助医療がほかの医療と異なるのは、新しい命がこの世に生まれてくるということ。生まれた子どもが周囲から特異な目で見られるなど、社会的な問題が生じる。彼らが成長の過程でどのように感じ、どんな状態にあるのか、世界中で話を聞いてきた。

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