人生後半には「成熟」という変化、成長が必要だ 『成熟スイッチ』著者の林真理子氏に聞く

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作家、日本大学理事長の林 真理子氏
林 真理子(はやし・まりこ)/作家、日本大学理事長。1954年生まれ。日本大学芸術学部卒業。コピーライターとして活動したのち作家に。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞受賞。2022年7月日本大学理事長に就任。『ルンルンを買っておうちに帰ろう』『不機嫌な果実』『小説8050』など著書多数。
中高年には成熟が必要、と聞けば、当たり前のようにも思える。ただし本書で語られる成熟は、単に物わかりのよい大人になることではない。その本質は変化や成長。今の自分がよりよく変わっていくための大小の挑戦なのだという。作家として成功を収めながら、2022年7月、女性初の日本大学理事長となった著者自身も、変化を実践し続けている。

50代以上の方に向けた『成熟のすすめ』

成熟スイッチ (講談社現代新書)
『成熟スイッチ』(林 真理子 著/講談社現代新書/924円/192ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──「成熟」をテーマとした理由を教えてください。

今の日本では、大人が成熟していないからです。人間は年齢を重ねたからといって自然と成熟に向かいはしないし、「さあ、成熟しよう」と思ってすぐさま成熟できるわけでもない。私は最近、若いときの「変化」や「成長」が、年を取ってからの「成熟」なんじゃないかと思うんです。

約10年前、若い世代を対象に『野心のすすめ』を書きました。当時は無欲な若者像や諦めの蔓延に社会の注目が集まっていて、身の程よりも上を目指す人生はみっともない、という風潮があった。そんな時代だからこそ伝えたかったのが、健全な野心、つまり「もっと価値のある人間になりたい」と願うことの大切さです。でも今は、その頃のよくない傾向がもっと進んできたように感じる。どうやら若い人に限らず、本来であれば成熟が望まれる年代にもやや幼稚な傾向があるな、と。

私は、年相応の落ち着きや他人への思いやりといったものに加え、成熟とは「昨日のままの自分だと、少しつまらないよ」ということでもあると考えています。本書は中高年、50代以上の方に向けた本ですが、この点は『野心のすすめ』ともつながっているんです。

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