権力とは、財布を握っていることである

東京税理士会会長が読み解く「帳簿の世界史」

帳簿を読み解くと、歴史にいかに影響を与えてきたのかが見えてきます(写真:vetkit / Imasia)
東京税理士会会長を務める神津信一氏が『帳簿の世界史』(文藝春秋)を読み解く。

 

「利益が出すぎてしまった。先生なんとかしてくれませんか」

税理士を長くやっていると、会社の社長にこんなことを言われる機会が必ずあります。要するに、なんとか税務署をごまかす方法はないのだろうか、と相談されているわけですが、その会社のためにも税理士自身のためにも、

「なんともしようはない」

と言うしかありません。

つまり、会社の帳簿、決算書とは、それほど厳格なものであり、厳格であればあるほど実は、会社は伸びるのです。

権力者でも、会計士を疎んじれば権力を失う

それは、今も昔も同じ、ということをジェイコブ・ソール氏の『帳簿の世界史』(文藝春秋)を読んで今さらながら、痛感しました。

権力者は会計士によって権力を掌握し、会計士を疎んじることで、やがて権力を失うのです。

たとえば、この本の中には、中世のイタリア、金融業から始まり、やがては国家を経営することにもなるメディチ家の興亡について書かれていますが、メディチ家は会計士が興し、会計士が滅ぼしたと言っていい。

メディチ家の当主だったコジモ・デ・メディチ(1389~1439年)の時代にメディチ家は栄華を極めますが、それは彼が会計士的な才能によっておカネの管理がうまかったことに起因します。コジモは、メディチ銀行のローマ支店で、会計の実務も経験していました。

メディチ家の当主コジモは自分で帳簿をつけることができました。しかも、同じページに借方と貸方を記入する簡単な複式簿記を行っていたのです。

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