「勝てない競走馬」はどうなるのか 日本一の調教師・角居師の「もう一つの挑戦」
いよいよ、今年も世界最高峰クラスの競馬である「ドバイ国際諸競争」が、UAE(アラブ首長国連邦)で行われる。人間のアスリートと同じように、競馬も短距離から長距離までレースはさまざまだが、今回日本馬は7頭が参戦。このうちメイン競争の「ドバイワールドカップ」(2000メートル、ダート)に、ジャパンカップなどを制した「エピファネイア」と挑戦するのが角居勝彦(すみいかつひこ)調教師だ(発走は日本時間29日2時。ちなみに同レースには別途「ホッコータルマエ」も参戦)。
競馬ファンなら角居師のことを改めて説明する必要はないが、2007年に3歳牡馬が主役のクラシックである「ダービー」に、牝馬の「ウォッカ」で勝った調教師といえばわかる読者もいるかもしれない。また2011年東日本大震災直後の「ドバイワールドカップ」を「ヴィクトワールピサ」で制し、日本を勇気づけたのも角居師だ。
勝てない馬の厳しい現実、自ら誓った「もう一つの夢」
JRA(日本中央競馬会)が主催する最高峰のレースである「GI」競争21勝を含め、海外も含めたGIの勝利数32は日本一。今年のドバイワールドカップでは2度目の制覇がかかる。28日は角居師51歳の誕生日でもあるのだが、実は、「世界の角居」が仲間と生涯をかけて取り組もうとしている事業があることは、あまり知られていない。それは「引退競走馬」転用のプロジェクトである。
一言でいえば、引退競走馬を、乗馬用などに鍛え直し、馬との触れ合いを通して人間のリハビリや癒しにあてる「ホースセラピー」の分野や、通常の乗馬分野などでの転用を図っていくプロジェクトだ。人間の社会風に言えば、競走馬の「第二の人生」(セカンドキャリア)を支援する計画である。
日本で生まれる競走馬は年間約7000頭。華やかな冠レースの裏で、このうち約9割が勝てないことや、ケガなどで競争能力を喪失したことなどを理由に最終的に殺処分されるのは「業界の常識」だ。
角居師が調教師の資格を取得したのは2001年。順調に戦績を重ねてきたが、「馬が勝てないのは、『調教がうまくいかなったせいでもある』という思いがある。だから、見て見ぬふりはできなかった。調教助手のころから、なんとかできないかと思っていた」(角居師)。
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