恋愛で「容姿の不利」を覆せる年収はいくら? カナダ名門大講師が教える男と女の経済学

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エコノミストが人間の行動をできるかぎり単純な言葉で言い表そうとする一方で、人間は非常に複雑な生き物です。完璧な伴侶探しとは、箇条書きの条件リストを一つひとつチェックしていくというより、経験が物を言うことです。そして条件リスト方式で相手を探しているときでさえ、個々の属性よりもその組み合わせが大切だったりもします。

金持ちのイケメンより貧乏なイケメンが選ばれる?

すでに述べたとおり、女性が相手に求める要素として容姿は大切ですが、どれだけの生活資源をもたらしてくれるのかも大切です。心理学者サイモン・チュー、ダニエル・ファー、ルナ・ムニョス、ジョン・ライセットらの共同研究では、女性は平均的な容姿の男性よりもハンサムな男性を、貧しい相手より金持ちを望みますが、ハンサムな金持ちとハンサムな貧乏人から選べるなら、後者を選ぶことがわかっています。

この、一見すると矛盾しているようなエビデンスは、誠実な男性を求めるという女性の好みに結び付けられます。どうせハンサムな男が手に入るのなら、浮気しそうな金持ちではないほうを選ぶというわけです。データによる裏付けもあります。

この研究では、出会いサイトに架空の登録者を20人登録し、彼らのプロフィールを、容姿格付けでは1から10までに均等に振り分け、職業は高ステイタス(医師、建築家)、中ステイタス(教師、ソーシャルワーカー)、低ステイタス(郵便配達、コールセンターのオペレーター)などに設定しました。このプロフィールを女性に見せ、どの相手と長く付き合いたいかを聞いたのです。

女性たちは、容姿が魅力的(7以上)であるなら、高収入よりも中収入を選びました。しかし容姿が並み程度(4から6)であると、中収入よりも高収入の相手を選びました。この傾向は、疑り深く、デート市場における自己評価が低い女性たちほど強かったのです。

この理由を一言で言うと、浮気を恐れている女性は、もてそうな男を避けるということです。男は浮気するものと思っているからかもしれませんが、同時に、恋人や夫を守ることは疲れることであり、だからいつもほかの女に追いかけ回されそうな男を選ぶ際のコストを、避けているからかもしれません。

マリナ・アドシェイド ブリティッシュ・コロンビア大学講師

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Marina Adshade

カナダ・バンクーバー市のブリティッシュ・コロンビア大学で経済学を講じている。クイーンズ大学にて経済学のPh.D.を取得。2008年には学部生向けに経済学の視点からセックスと恋愛を考えさせる「セックスと恋愛の経済学」講座を開講、講座は瞬く間に人気を博した。ブログ「ダラーズ・アンド・セックス」(marinaadshade.com)主催。

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