「サッカー代表専属シェフ」が挑む集大成のW杯 5度目の帯同、選手を支える食事作りの裏舞台

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日本代表を食事面から支える西芳照シェフ(写真提供:JFA)

サッカー日本代表のワールドカップ初戦となるドイツ戦(23日)が迫ってきた。国の威信をかけた戦いはまさに総力戦。選手が最高のパフォーマンスを発揮するための三大要素「練習・栄養・休養」のうち、特に裏方のサポートに頼るところが多いのが「栄養」だ。今回で5度目のワールドカップ帯同となる日本代表専属シェフの奮闘ぶりに迫った。

トップ選手は個人で専属シェフを雇う

栄養は管理が難しい。「炭水化物・タンパク質・ビタミン・カルシムなどをバランスよく食べる必要がある」という理屈は常識だが、試合や練習で疲れた後に自ら食事の支度をするのは容易ではない。一般のスポーツ選手であれば、炭水化物や脂質を過剰摂取してしまい、体重オーバーやコンディション不良に陥るケースも少なくないだろう。

トップ選手でもその問題には大いに苦労している。今のサッカー日本代表は大半が欧州組。欧州の場合は日本と違って、スーパーに行っても惣菜はほとんど売られていないし、24時間いつでも外食できる環境はない。オランダやベルギーの田舎町へ行けば、レストランさえロクにない。妻帯者は多少のサポートは期待できるかもしれないが、独身者は本当に困るのだ。

2016年夏~2020年夏にかけて、オランダ1部のへーレンフェーンとベルギー1部のワースラント・ベフェレンでプレーした元日本代表MF小林祐希(神戸)の例を挙げると、ホテル生活を強いられた最初の1カ月は、肉、ポテト、パスタやビザばかり。朝食もパンやシリアルやオートミール、バナナに牛乳という感じで、内臓の調子がおかしくなったという。

「それでジュビロ磐田時代にお世話になった方にお願いして、ストックできる食事を大量に作り置きしてもらいましたが、それだけでは足りなかった。そこで2019年夏から旧知の友人に専属シェフとして来てもらい、3年間サポートを受けました。食事面のケアは本当に重要だと痛感しましたね」

カタールW杯に挑む現日本代表選手たちも似たような現実に直面している。長友佑都(FC東京)がイタリア・トルコ時代から専属シェフを雇って抜本的に食事を見直し、現在に至っていることは広く知られているが、彼に倣って同様の対応をしているケースも少なくないようだ。

日頃から食生活に細心の注意を払っている代表選手が4年に一度のワールドカップ(W杯)に挑むとなれば、栄養面に対してよりナーバスになるはずだ。

JFAもそのあたりはよく理解しており、日本代表に力強い援軍を用意している。その人は西芳照(よしてる)さん。2004年から専属シェフを務め、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアと過去4度の大舞台に参戦したシェフである。

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