遼太君の悲劇、今度こそ繰り返すな なぜ大人は子どもの命を守れないのか

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他にも、2011年の大津市市立中学生の、自殺の練習を何度もさせられたあとの飛び降り自殺で校長が真っ先にしたことは、「練習はなかった、ウソだった」という校内放送でした。校長は何を守ろうとしたのでしょうか。

2014年の佐世保市の、「人を殺してみたかった」理由で友人の女生徒を(これはイジメ事件ではありませんが)あやめた事件では、保護者や精神科医が児童相談所に連絡していますが、この相談は上司の判断で無視され、受け付けられませんでした。

死を無駄にしない、との決意だけが繰り返される

事件のあとはいつもこれらの死を無駄にしないようにと、関係者から決意が述べられ、そしてイジメのサインを見逃さないよう、いろいろ申し合せがされています。しかし、学校側は及び腰の対応をしがちです。今年の1月にも守口市で、イジメの被害者生徒の母親が、加害者生徒の指導に校長も関わるように要望すると、校長自身が、「校長が関わるのは人が死んだり、大きなけがをしたときだけ」と回答しています。

「うちの子が死んだら介入するということか」と母親は抗議し、校長は市教委から厳重注意を受けました。彼にはイジメられている子の心情に寄り添う想像力の欠片もなく、イジメが刑事事件にまで発展している現状認識もないようです。

桐生市事件の上村明子さんは、「先生に言っても無駄だから」と言っていたそうです。これだけ「事件を教訓にしよう」と叫ばれている今の時点で、イジメに関する危機意識や指導能力のない先生や校長先生が存在することが、この守口市の校長の発言で知り、私は腹立たしくてしようがありません。今回の遼太君の場合は、学校側から母親に何度も電話を掛けていたようですが、繋がらなかったようです。

では、そうした中で、どのようにわが子を守るべきか。子育て中のママにとっては深刻な課題です。まずは、平素から、「もしイジメられたら、絶対に相談してね」と伝えておきましょう。お母さんはどんなことでも解決できるんだよ、と子供に安心感を与えましょう。

クラスや近所でイジメがあった場合、お友達に異変が起きているという話を聞いた場合にも、聞き流さず、学校ぐるみや地域ぐるみで大人が解決していくよう、ほかのお母さんたちとも申し合わせをしておきましょう。他人の子供もお互いに見守ることを、保護者会などで確認しましょう。

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