「太陽光27円、他の再エネは据え置き」の狙い 調達価格等算定委員会の植田委員長に聞く

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一方、他の再エネはこれまで設備導入があまり伸びていないが、やむを得ない部分もある。地熱は(生産井を)掘らないといけないので運転まで10年はかかるし、バイオマスも原料集めなどが難しい。風力も環境アセスメントなどで3~4年はかかる。3年の期間で急速に伸ばすのは難しい。

特措法の第3条第2項には「供給の量の状況」を勘案することとされており、他の再エネのこれまでの供給量を考えると、3年の優遇期間が終わった後も買い取り価格を維持したほうがいいと判断した。

小規模バイオマスの区分新設で地域活性化

うえた・かずひろ●1952年3月、香川県生まれ。75年、京都大学工学部卒。京都大学博士(経済学) 、大阪大学工学博士。94年、京都大学経済学部教授。97年、京都大学大学院経済学研究科教授、2002年から京都大学地球環境大学院教授兼任、現在に至る。専攻は環境経済学、財政学。

もう一つ重要なのは、小規模の未利用木質バイオマスを別区分化したことだ。従来は効率的な発電の基準を5000キロワット規模として費用構造などを見ていた。しかし、バイオマスは原料を集める必要があり、地域の立場から言うとなかなか簡単ではない。

今回、2000キロワット未満という区分を新設したが、中小規模で原料を地域で集めやすくなることで、地域の活性化に大いに効果を持つことを期待している。

また、太陽光の費用計算に関しては、昨年9月24日の九州電力の接続保留問題に伴って、経産省で新エネルギー小委員会や系統接続ワーキンググループで出力制御ルールを策定したので、そのルールにより出力制御機器を設置する場合にはその費用を勘案することにした。

全体的には、太陽光に関しては法律を粛々と実行する一方、それ以外の再エネについてはこれから伸びる段階に入るので、上乗せ措置をしてこれを後押ししていく。

――九州など日照条件がよく地価の安い地域での接続量に限界が見え、さらに買い取り価格が27円へ大幅に引き下げられることで、太陽光発電への投資が激減するとも言われる。

決して完全に冷えてしまうということにはならないと考えている。住宅用など自家消費のための太陽光発電の投資の伸びは今後もそれなりにあるのではないか。これは接続保留問題とは関係がない(対象外なので)。

また、出力制御の問題は九電など5電力会社に関して言われているが、逆に言うと関西電力、中部電力、東京電力の3社にはまだ余裕があり、マーケットも非常に大きい。今後は投資先のシフトが促される面もあるだろう。

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