「人権ビジネス」開拓が、堕ちた日本企業復活の鍵 『ビジネスと人権入門』著者・羽生田慶介氏に聞く

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オウルズコンサルティングループ代表の羽生田氏
羽生田慶介(はにゅうだ・けいすけ)/オウルズコンサルティンググループ代表。1978年生まれ。経済産業省大臣官房臨時専門アドバイザー、一般社団法人エシカル協会理事、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン理事ほか複数兼務。国際基督教大学教養学部卒業後、キヤノン、経済産業省、A.T. カーニー、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、2020年当社設立。22年Forbes JAPAN「日本のルールメーカー30人」に。著書に『稼げるFTA大全』など。(撮影:梅谷秀司)
昨年、ある国連決議が可決された。気候変動を含む環境問題が人権問題と関連するという「環境への権利」決議。棄権したのは4カ国。中ロ印とよく見るメンツに連なったのは、日本。国際的な人権評価で日本企業は軒並み底辺付近に位置する。ビジネスの論理で早急な人権対応の必要性を訴える著者は、具体的な行動計画やその際の注意点、業種別の要注意リスクなど実務面も重視、内外企業の例も多く掲載されている。
すべての企業人のためのビジネスと人権入門
『すべての企業人のためのビジネスと人権入門』(羽生田慶介 著/日経BP/2200円/295ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──SDGs(持続可能な開発目標)で、日本人の関心は環境に偏り、人権に対しては低いようです。

大気はつながっているのだから全世界で取り組もう、というコンセンサスができている。ルール整備が進み、気候変動対策は「やって当然」まで来ました。一方人権に絡む対策は、各企業が当事者意識を持って取り組む必要があり、ルールづくりが遅れていたのも事実。ただ世界的には貧困や強制労働など人権問題が危急とされることも増えており、その点日本人の感覚がズレてるのは確かですね。

効率化に成功した企業ほど人権リスクが生まれる

──SDGs達成目標は2030年ですが、児童労働の撤廃だけ25年というのを初めて知りました。

近年、児童労働が統計以来初の増加に転じた。背景にはコスト競争過熱による過度のサプライチェーン効率化があります。コロナ前の10年で日本企業の売上高は横ばいなのに利益は5倍へ拡大した。顧客からの締め付けでなりふり構わずコストを削り、そこに人権無視の現地サプライヤーが紛れ込む。効率化に成功している企業ほど、10年前にはなかった人権リスクが生まれている可能性があります。

──その兆候を実感されますか?

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