音楽アルバムはなぜ、金曜日発売になるのか 世界統一発売日めぐり世界中で大論争の末…

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昨年11月に発売のアルバム「1989」では、売り上げ記録を更新したテイラースウィフト(写真:Chad Batka/The New York Times)

イギリスに住む音楽ファンにとって、新しいアルバムの発売日は月曜日が多い。米国は火曜日、日本は水曜日に店頭に並ぶ。

実店舗が音楽を買う主な場所だった時代は、地域によって発売日がずれても、業界全体に大きな影響はなかった。しかし、今はデジタルの時代だ。このような商慣行はしだいに古くなり、待ちきれないファンが新作をオンラインでやり取りするなど、海賊版を助長しかねない。

そこで国際レコード産業連盟(IFPI)は、半年以上の激論の末、アルバムの発売を各国の現地時間で金曜日午前0時1分に統一すると決めた。世界中のファンがほぼ横並びになり、海賊版も減るだろうとIFPIは考えている。

「音楽ファンはデジタルの時代を生きている。インターネットで聴けるようになったら、すぐに聴きたい。アルバムが地元の店頭に並ぶまで待ちきれない」と、IFPIの声明でフランシス・ムーアCEOは語っている。

ムーアによると、もっともふさわしい「世界発売日」をめぐり、レコード会社や販売店などの協議は9カ月に及んだ。金曜日に賛成した大手小売店とデジタル配信サービスのなかには、ターゲットやiTunes、スポティファイの名前もある。

HMVの経営再建を進める投資会社ヒルコ・キャピタルのポール・マゴワンCEOは、「ファンがいちばん買いたいときに新作を提供できる」と語る。

小規模小売店からは反発も

ただし、独立系や小規模な小売店は、今回の決定に反発している。デジタルの販売体制を効率化するために、実店舗を犠牲にしているというのだ。アルバムの売り上げは世界的に落ち込んでいるが、調査会社ニールセンによると、米国では昨年1億4100万枚のCDが売れ、LPのレコード盤も900万枚以上売れている。

金曜日は「最悪の選択肢」だと、ペンシルベニアで音楽販売チェーン店ギャラリー・オブ・サウンドを経営するジョー・ナーダン・ジュニアは嘆く。人気のアルバムを、客の集まる週末に確保できないなど、流通の問題が起こりかねないという。

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