無印良品、強さの秘密はどこにあるのか 「Bisa(微差)」を「微差力」に高める

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良品計画では半年に1度、改善提案活動の表彰式を行っています。それによって現場の士気を高く保ち、この活動を10年以上も続けてきています。

改善提案活動自体を行っている企業はたくさんありますが、うまく成果を上げられていない企業のほうが多い。その違いは、「褒める」仕組みも含め、取り組みを支える「土台」があるかどうかだと私は考えています。

詳しくは『現場論』に書きましたが、改善を根付かせ、定着させるには、「阻害要因の除去」「学習」「競争」「報酬」の4要素が欠かせません。

たとえば、改善提案活動を始めると「(提案を)書く時間がない」とか「提案しても採用されない」などの不満がつねに生まれます。それらは、取り組みの阻害要因になりやすいので、現場のリーダーが中心になって取り除く必要があります。

こうした「土台」がないと、似たような活動を始めたとしても、大きな成果は望めません。それは企業の部署単位での業務改善でも同じ。

改善を定着させ、競争力に高めたいと思っている人は、ぜひ『現場論』を参考にしてください。

「微差力」がイノベーションを生み出す

プリウスなどのハイブリッド車は、日本が生んだイノベーションとして世界的に認知されています。しかし、実際はトヨタの十八番である、改善という「Bisa」を積み重ねてきた結果にほかなりません。

イノベーションを実現するには、高い目標、不連続の目標を設定することが不可欠ですが、その実現のプロセスで行われていることは、「Bisa」の蓄積です。たぐいまれな「微差力」があるからこそ、トヨタはハイブリッド車というイノベーションをリードしているのです。

これこそが「日本型イノベーション」です。現場の「小さな気づき」「改善・改良(Bisa)」を活かすことこそが、日本発のイノベーションにつながるのです。

次回は、「現場の声」(VOG、Vocie of Gemba)から革新的サービスを生み出すヤマト運輸の取り組みについて紹介します。楽しみにお待ちください。

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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