復旧へ青信号か、JR「肥薩線」支える地元の大奮闘 官民そしてJR九州、3者一体での取り組みがカギ

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2022年3月に開催された「JR肥薩線の復旧を求めるアピール集会」(写真:人吉市)

2020年7月豪雨で甚大な被害を受け今もなお八代(熊本県)―吉松(鹿児島県)間の86.8kmで不通が続いているJR九州の肥薩線。SL人吉号をはじめ話題性の高い観光列車の運行で人気の高い観光路線であったが、特に熊本県側の被害が甚大で鉄道の復旧に当たっては235億円と見込まれる巨額の復旧費と慢性的な営業赤字(2019年度は約9億円)が問題となり、当初はJR九州も観光列車のためだけに鉄道の復旧を行うことは難しいとの認識を示し、存続が危ぶまれる状況となっていた。

しかし、2022年3月23日に国土交通省と熊本県、JR九州の3者で鉄道での復旧を前提とした検討会議が開催され、国土交通省は道路や河川などの公共事業との連携によりJR九州の負担額の一部を肩代わりできるという認識を示した。

さらに、4月18日には熊本県と県内の沿線12市町村で構成されるJR肥薩線再生協議会(会長・田嶋徹副知事)では、肥薩線の慢性的な営業赤字を補うため、県や市町村が運行費の一部を補助する案が示され、今後は「赤字路線の運行費補助制度の新設を国に対して求めていくこと」が確認され、鉄道としての復旧への見通しが付けられることとなった。

なぜ、このような取り組みが可能となったのか関係者を取材した。

官民を挙げた取り組み

肥薩線の復旧に向けては、沿線住民の有志で活動が行われている署名活動や沿線自治体関係者と住民で開催された「JR肥薩線の復旧を求めるアピール集会」など官民を挙げた取り組みが目をひく。

民間での中心的な役割を果たしてきたのは「肥薩線again」と「人吉温泉女将の会『さくら会』」という団体だ。人吉温泉観光協会で事務局長を務める北原久史氏は、被災から1年近くは鉄道の復旧等についてどうするべきか地域でさまざまな模索が行われてきたが「『肥薩線again』が先陣を切って声を上げたことで大きな署名活動という流れができました」と当時を振り返る。

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