82歳のペロシ下院議長が台湾訪問「強行」した訳 バイデン大統領の懸念や中国の脅しもあったが

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台湾を訪れているアメリカのナンシー・ペロシ下院議長(写真:I-Hwa Cheng/Bloomberg)

1991年、アメリカ下院議会の超党派の若手議員3人がアジアを訪問した際、香港で出会った反体制派のある中国人に勇気づけられた。そして北京に到着すると、反体制派の人々や天安門事件の犠牲者との連帯を示すことになった。

3人の議員は、すぐに大胆不敵なアイデアを思いついた。

中国に「乗り込んだ」3人の議員

「私たちは同時に同じ考えに至った」と、当時ジョージア州選出の民主党議員だったベン・ジョーンズ氏は振り返る。ジョーンズは、ワシントン州選出の共和党議員だったジョン・ミラー氏と、カリフォルニア州選出で将来を嘱望されていた民主党のナンシー・ペロシ氏とともに中国を訪問したのだ。

3人は、その2年前にデモ隊が暴力的に鎮圧された大きな広場に忍び寄っていった。そして、反体制派から提供され、ジョーンズ氏が密かに中国本土に持ち込んだ横断幕を掲げた。

そこには「中国の民主主義のために亡くなった者たちへ」と、中国語と英語で刺繍されていた。

この大胆な行為には警察がすぐさま対応し、外交上の問題となった。しかしながら、今や下院議長となったペロシが8月2日に台湾を訪問したことに比べれば、国際的には小さな問題だった。

だが、これら2つの出来事は、長年にわたるペロシの対中活動でつながっている。彼女は30年以上、人権などの問題で中国に異議を申し立ててきた。現在の対立はその最新の例にすぎない。そして、アメリカ政府で最高の権力を持つ女性が、「意義ある闘い」と位置づけているものから逃げないことも示しているのだ。

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