発明家というと、昔の物語に出てくるような埃っぽいイメージがある。暗いガレージで、日夜機械いじりをしているような風景が思い浮かぶ。だが、ディーン・ケーメンはリアルタイムで精力的に活動を続ける現代の生身の発明家だ。
セグウェイは彼の発明のひとつに過ぎない
ケーメンの名前は、セグウェイで広く知られるようになった。
自転車、自動車、電車と、もう乗り物のかたちはこの世に出尽くしたと思っていたところ、体重を前に傾けるだけで前進する不思議な2輪の乗り物が生まれたのだ。電気で静かに動くが、まるで魔法のようにスムーズに走行する。
2001年に発表されたセグウェイは人々の日々の乗り物となって、路上から自動車を減らすものと考えられていた。みながセグウェイに乗って通勤したり買物に行ったりする未来的な都市が、そこに描かれていたからだ。
その意味ではセグウェイは決して成功したわけではない。現在使われているのは、空港やショッピング・モールなどの警備員、警察、そして観光などの限られたシーンだけ。それでも、一度でも乗ったことのある人ならば、技術を賢い方法で組み合わせる「発明」ということばの意味を深く体感できたはずだ。
ディーン・ケーメンの発明は、セグウェイのもう何年も前から始まっていた。たとえばセグウェイの先駆けとなったのは、1990年頃に発明した立ち上がる車椅子「アイボット」だった。
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